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泥に咲く蓮
第4章 膨らみ、開花
(決めた、もう迷わない)

亮二はシバを彼氏だと誤解したままだ。
ちょうどいいではないか。

軽い女だと思われたらいい。
亮二に、見境のない女だと思われた方が諦めがつく。

どのみち綺麗なまま、亮二を想い続ける事も諦める事も無理なのだ。

梨花はすでにもう、触れる、触れられる悦びを知ってしまった。
とっくに後戻りはできないところまできてしまったのだ。

(リョウくん、部屋にいるって言ってた…)

梨花の自室の隣に、もうひとつ十畳ほどの部屋がある。
梨花が越してくる前は、そこが亮二の寝室だった。

身体を拭き、バスタオルを巻いて部屋をノックした。

「…入っていい?」
「どうぞ」

おずおずとドアを開けると、セミシングルベッドに亮二が俯せていた。

傍に背の高めのルームライト、ほとんど空になっている本棚と畳まれたイーゼルスタンドしかないシンプルな部屋だ。

「…」
「…」
亮二が手元のリモコンで部屋の明かりを消し、白熱灯のルームライトを最小限に絞って点けた。
そのまま仰向けになり、上体を起こす。

「…おいで」
亮二がベッドから梨花をそっと呼んだ。

「…頭は冷えなかったんだな」
ベッドに腰かけた梨花に、亮二が言った。
「…」
「…」
俯く梨花の背中に、亮二がそっとくちづける。
梨花の身体がピクッと跳ねた。
亮二が腕をまわして、背後から梨花を抱き寄せた。
梨花の背中からうなじに、スライドするようにキスを重ねる。

「あ…っ」
びくびくっ、と梨花の意思に反して身体が動く。
「…こっち向いて」
耳元で亮二が囁く。
亮二へ顔を向けると、彼の右手が梨花の顎を優しく持ち上げ、くちづけた。

「…ん…」
梨花も身体ごと、亮二へ向ける。
また、亮二が梨花の口唇を割って舌をすべりこませた。
亮二の腕に掴まり、梨花も口を開けて亮二の舌を受け入れる。
じゅっ、ちゅ…とまた唾液音が漏れている。
梨花の頭に、また痺れたような恍惚が広がる。
亮二の手が、そっと梨花のまとめていた髪をほどいた。
サラサラと髪が背中に落ち、それを亮二が指ですく。

「…ここにおいで」
梨花をベッドの真ん中にそっと移す。
軽く上体だけ起こせるように枕やクッションを重ねて置き、そこへ梨花をゆっくり押し倒した。
亮二が上から梨花に被さるようにキスをする。

「ん…っ」








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