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地味子が官能小説を書いたら
第7章 この夜に乾杯!

---------- 【破】イヤな奴は意外とイイ奴だった⑩ ----------

ホテルを出た後、紗栄子は杏果と一緒に近くのワインバルにいた。

紗栄子のデビューのお祝いにと、立花が3万円を渡してくれたのだ。

「それじゃあ、デビューおめでとう!」

「ありがとうございます」

紗栄子と杏果は、ビールの入ったグラスを合わせた。

キン、と短く金属音が鳴る。

「紗栄子ちゃん、いけるくち?」

「えへへ、実はわたし、フライングなんです」

「フライング?」

「来月20歳なんです」

「聞かなかったことにするわ」

「えへへ」

「ところで、紗栄子ちゃん、このままAV女優を続ける気?」

25万円も手に入った。十分だ。しかし、紗栄子は海にまた会いたいと思っている。

もしかしたら、このままアダルトビデオに出演し続けていれば、何処かで海に再会できるかもしれない。

「最初は、今日の1回だけで辞めようかなと思ったんですけど、もう少し続けても良いかな、なんて考えてます」

「そう、だったら社長に仕事を取って来てもらうわ、極力安全な仕事を回してもらうようにする」

「あぶない仕事もあるんですか?」

「AVをプロデュースする会社はたくさんあるの」

「中には過激なものを撮る会社もあって、そういうとこは女優を使い捨てにするのよ」

「社長は、お調子者にみえるけど、スタッフは大切にする人だから信頼はできると思う、ちょっとお人よしだけどね」

「どうして杏果さんは立花企画で働いてるんですか?」

「私も、紗栄子ちゃんくらいの時にAV女優をしてたの」

(やはり)、かと紗栄子は思った。でなければ、代役するなんて平気で言えるはずがない。


「私、そのころ大学生だったんだけど、元カレがヤバい人で、借金をいっぱい作っちゃって、私が返済してたのよ」


「ええええーーーー、海って、そんなに悪い奴だったんですか?」


「紗栄子ちゃん……あなた、もしかして少し天然入ってる?」

「私が大学生の時、海くんは中学生よ、私、犯罪者になっちゃう」

「あはは、そうですよね、あはは、冗談ですよ、そんなこと分かってますよ」笑ってごまかす紗栄子。


「その時、社長に助けてもらったの」

「へ~、立花さんって、単なるスケベおやじかと思ってた」

「まあ、スケベは否定しない」




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