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桃衣の天使
第4章 真白な未来
 いつまでもこうしていたい。五年後十年後も一緒に居たい。冷静に考えれば熱に浮かされた思春期にありがちな浮わついた現実味の薄い妄想だ。大人に話せば鼻で嗤われるか生暖かい目で見られるのがオチだろう。
 俺は愛花を引き寄せるとキスをした。いつより長くいつもより激しいキスに愛花はポ~っとしている。
 頬を赤く染め目を蕩けさせる愛花を手離すなんてできっこない。
 「愛花。」
 真剣な俺の声に愛花の表情が引き締まる。
 「はい。」
 「俺達の始まりは蒼馬老の手引きだった。お前の両親を脅迫しての人身御供という卑怯な方法だった。」
 口を開こうとするのを手で制して言葉を続ける。
 「最初お前は自由に抱ける女の子でしかなかったんだ。」
 愛花の目から涙が零れ落ちる。
 「今は?」
 震える声で尋ねてくる。ポケットから洗い立てのハンカチを取り出して涙を拭ってやる。
 「今は、一番大事な俺の女だ。クラスの男どもがお前を見るのさえ嫌だ。お前が好きだ。愛してる。」
 言い終えて急に怖くなってきた。フラレたらどうしよう。そればかりが頭を巡る。告白を決めた時からもしフラレたら蒼馬老にお願いして愛花の両親への締め付けは無しにして貰い綺麗に別れようと覚悟していたのに。なんと意気地がないことか。我ながら嫌になる。
 少しの間を置いて愛花の腕が振り上げられる。ああ、これで終わりか。目を瞑り決別のビンタを待つ。
 痛みが来ない?両頬を暖かい者が挟み唇に良く知っている柔らかい物が押し付けられる。目を開けると直ぐそこに涙に濡れた瞳があった。
 おれから離れた愛花の唇が小さく動く。
 「私もです。私もご主・・・当麻さんが大好きです。愛してます。」
 俺は愛花を抱き締め再びキスをした。
 
                完 

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