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不倫研究サークル
第12章 女社長
(アラサーって……、宮下さん、何歳なんだろ?)

僕が考えを巡らせていると、察したのか、綾乃の方から話を振ってくる。

「ねえ、圭君。 私の歳、気にならない?」

「え……と、少し」

「今年、27になるの。 圭君とは八つも年上」

この場合、なんと応答するのが最適なのだろう?判断に困ってしまう。

「なのに、今日も凄く楽しみで、朝からワクワクして、服も何を着ていこうか、髪型はどうしよう? とか浮かれて、馬鹿みたい」

「それは、僕も同じです。 宮下さんとデートだなんて、僕にとっては夢みたいな出来事が実現するんですから。 僕もずっと、ワクワクしてました」

「ホントに?」

「はい」

「嬉しい。 ねえ、この間、川本さんが言ってたことなんだけど……、ホント?」

愛莉が言っていたこと……、僕が綾乃の事を『好き』と言うこと、そのことを綾乃は聞いているのだろう。

「僕が、宮下さんの事を『好き』と言う事ですか?」

不安げな表情で綾乃は、僕を見つめる。

「『好き』とはちょっと表現が違います」

僕の答えに、綾乃は何か言いかけるが、構わずに僕は続ける。

「『好き』というより、『憧れ』みたいなものです」


「そ……うよね、私じゃ恋愛対象にならないわよね……、でも、じゃあ、どうしてキスしたの?」


「そ、それは……」

綾乃がキスをしたがっていたからなんて、言えない。

「なんとなく、あの場の雰囲気で……」

「私が、飢えているように見えた?」

いつになく、綾乃は卑屈だった。そして、今、綾乃は何を望んでいるのか、僕には分かっていた。


「そんな言い方、やめてください」

「私、中学から女子校で、大学に入ってすぐに事業を始めて、これまで真っすぐに走ってきたの」

綾乃からは、いつもの凛とした緊張感がなくなり、柔らかい少女の表情になっていた。

「恋愛も必要ないって思っていた。そもそも私って、そんな柄じゃない。
男の人にデートに誘われたのも……、信じられないでしょうね、森岡君が初めて。

私って、自分で言うのも可笑しいけど、初心なのよ」

女の人の、泣き出しそうな表情に、どうしてこうも胸を締め付けられるのだろうか?

「それなのに、キスなんかして」

そこまで言うと、綾乃は眉をひそめた。


「ちゃんと、責任とって」




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