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不倫研究サークル
第16章 卒業
僕は、教師になろうと思った。

松江で高取夫妻と会い、土門華子の母と会い、そこで感じたのは、どうして土門華子のような被害者がでたのだろうか、という事だった。

美紗は、自分の力不足だと嘆いた。でも、それは違う。教師一人の力なんてたかが知れている。もっと、多くの人が関わらないと解決できない問題も存在するのだ。

悩んでいる子供がいたら、その力に、少しでもなりたいと僕は思った。
もちろん、僕一人の力なんて無力に等しいのは分かっている。

だから、周りを巻き込むような、そういう行動をとれる人間になりたかった。

通常、教職課程は二年次から履修するが、僕は三年次からだったため、単位の取得がギリギリとなった。

加えて四年次には教育実習もある。卒論も書かなきゃいけない。
さらには、不倫研究会の運営もある。僕の代でサークルを無くすわけにも行かず、地道ながらサークルは存続させ、いまでは部員が僕を含め八人にまで増えていた。

僕が教師になると決めてからの生活は多忙を極めたが、無事に教員採用試験にも合格し、赴任先も奇跡的に希望がかなった。


僕は今、四年間を過ごしたアパートを出ようとしている。


「ここは来るのって、三年ぶり……だね」

引っ越しのため、荷物をまとめていたのだが、陽菜が手伝いに来てくれたのだ。

陽菜も卒業式を終え、四月からは付属の大学への進学も決まっている。晴れて女子大生になるわけだ。

少し大人びた陽菜は、超絶美少女へと進化していた。おそらく大学へ通う事になったら男子が放っておかないだろう。

「今日ね、圭の部屋に泊るって、ママに言ってあるの」

陽菜の言わんとするところは分かっている。陽菜が卒業したら、僕たちは付き合う約束になっていたからだ。

「しかし、本当に僕と付き合うのか?」

「うん、ずっと言ってたじゃない。 ワタシ、高校時代に何人に告白されたと思っているの?」

陽菜は、女子高に通いながらも他校の男子生徒から交際の申し込みが殺到したらしい。

「確か……、百人くらいだっけ?」

「それは、二年まで。 こないだ二百人目をフったばかりなんだから」

(カウントしてたのか?)と突っ込みたくなる。

「ちゃんと今日、ワタシを女にしてよね」




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