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体育倉庫のハイエナ
第5章 5
 沈黙の中、レンヤとマサムネの中指の先は、なおも奈津子の乳輪を、ゆっくりと撫でている。

 その指使いは、まるで乳首にイヤらしい呪文をかけてるみたいだ。
 
 二人がその愛撫を始めてから、相当な時間が経っている。

 今のこの時期だったら、1インチ角の氷ならすっかり融けて、水になってしまうくらいの時間は、もう経っているかも知れない。 

 奈津子はまだ、『寒空の下に全裸で立ち尽くしているように』身体と唇を、ガクガクと震わせている。
 
 その目はやはり大きく見開かれ、その見開いた目で、天井を見つめている。

 でも、もう泣き叫んではいない。泣き叫ぶ余裕がないのだ。

 果たして奈津子から、泣き叫ぶ余裕すら奪ったものの正体を、僕は知っている。

(乳首がもう、勃ちそうなんだよな…)

 今、奈津子は戦っているのだ。自分自身の性欲と、戦っているのだ。

 その戦いが、奈津子から泣き叫ぶ余裕を奪っているのだ。

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