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イキ狂う敏腕社長秘書
第6章 【錯綜していく感情】
「ありがとう、そこ置いといて」
「失礼します」
「あ、待って」
振り向くと新聞を見る時だけ掛けている眼鏡をデスクに置いてこちらに向かって来る。
「どうしてそんなに余所余所しいの?」
「え……?」
「昨日、俺が行ったのマズかった?」
「いや……あの、でも、来る時は連絡欲しいです、心臓に悪いので」
どんどん詰め寄られて壁際に踵が付いた。
こういう押しに弱いとこ全部見透かされている。
「アポなしはダメ?驚いた顔見たかったんだけど昨日は逆に俺が驚かされたよ、あの子と仲良いんだ?」
「はい……ドレスの時に仲良くさせていただいて……でも途中で体調悪くなって迷惑かけてしまいましたけど」
「ふーん、それで?明里抜きでも会うようになったんだ?」
社長の口から“妻”ではなく“明里”と出て少し戸惑う。
一瞬のうちにモヤモヤした気になるのはいくら何でも流され過ぎだって自分に呆れてしまうけど。
「はい………嫌、ですか?」
「いいや、そこまで口出すつもりはないよ。でも、これからもしかしたら根も葉もないあらぬ事を聞かされるかも知れない」
「え……?」
「あれ、もしかしてもういくつか聞いてるのか?明里から。今まで散々浮気だの不倫だの聞いたって顔してるな」
“あの人が抱いた女は大抵そうなるの”
というセリフが脳裏に蘇る。
だからどの女を抱いたのかすぐわかる…とも言っていた。
「信じるなって言いたいけど証拠などない。だけど無理やり距離を保とうとする分には遠慮なく壊していく」
グッと詰め寄られ逃げ場がなくなる。
頬に触れられ顔が近付いてくるから咄嗟に口を押さえ食い止めた。
「仕事中ですよ?慎んでください」
背けた顔も戻されて脚の間に社長の脚が入ってくる。
「気をつけるよ……でも、大事な部下がこんな無理して強がってばかり居たんじゃ俺の方が仕事に手がつかなくなるんだけど?」
「別に強がってなんか…っ」
額に額がくっついて言葉を見失う。
あれ…?ちょっと体温高いような。
目も虚ろな気が。
もしかして熱があるんじゃ。