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イキ狂う敏腕社長秘書
第11章 【静かに狂い咲くように】





あどけない寝顔を残して跡形もなく消えていく。
鍵……ポストに入れておくね。
明日も仕事だし。
泊まるフリして先に出て行く私を許して。




仕事も学業も頑張って。
キミなら夢を叶えられると思うよ。




なんてキレイごと並べて自分を正当化していた。
悪いのは私。
わかってて抜け出せないの。
足を踏み入れた沼は思ってた以上に深く、まとわりついて離れない。




きっと私はまた違う誰かに抱かれてる。
キミじゃない誰かに。









翌日何件かメッセージが入っていた。
私の身体を気遣う内容だった。
大丈夫だよ…と返してすぐに返事がきていたが未読のままにしている。




外出する際に顔を合わせたとしても、仕事中だから安易に話すこともないしアイコンタクトもしない。
徹底した他人の振る舞い。
関係を持った相手には周知の事だから気にせず仕事に打ち込める。




純粋で無垢なキミなら冷たく感じるかも知れない。
どんな事があってもあの約束だけは守って……そう願ってる。






「それではお先に失礼します、お疲れ様でした」




「あ、えっと……今日は飲み会だったな?総務課と」




ちゃんと報告はしてある。
だから今夜は会えないと。
迎えも要らないと。
笑顔で退社する私に何か言いたそうな様子。




「はい、失礼します」




踵を返すと案の定引き止めてきた訳で。
毎日散々一緒に仕事してるのに寂しそうな顔するんですね。




「家で待ってちゃダメ?」




「ダメです、誰かに見られたらどうするんですか?帰ったらちゃんと連絡入れますので」




「男も居るんだろ?美雨にその気はなくても酒が入れば男は野獣になるんだ」




「どの口が仰ってるんですか?」




「うっ……それはだな……」




自然と互いに笑みがこぼれる。




「心配しないでください、お酒の量も控えますし懐かしいメンバーと楽しい時間を過ごしてきます」




そう言ってるのにまだ抱き締めてくる。




「ほろ酔いの美雨が一番危ない」




「だからどの口が…っ」




しまった、油断した。
顔を上げたらもう遅かった。
強引に唇を奪われて腰から引き寄せられる。
やめて…と抵抗して無理やり唇を離した。










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