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イキ狂う敏腕社長秘書
第11章 【静かに狂い咲くように】
「はぁ………五十嵐さんですね、宜しくお願いします」
「敬語なんてやめてください、今日は真田さんとフランクにお話したくて楽しみにしてました」
「すみません……何かクセで」
清潔感溢れる黒髪と白い歯。
年齢的には同世代なのかな、といった感じ。
「一度だけお話した事あるんですよ?エレベーター前で……まぁ、覚えてなくて当然なんですけど」
そうだったのか。
全くと言っていいほど記憶にない。
一生懸命話してくれるので身体を向ける。
目を見たら何気に逸してくるのは照れなのか。
しかし、記憶にない顔。
「荷物で両手塞がっちゃってる俺に手助けしてくれたんです、会議室まで一緒に運んでもくれました。その時、髪は地毛ですか?似合ってますねって言ってもらえたんですけど」
「えっ!?あっ……」
それを言われてピンときた。
何かそんな事言った記憶がある、蘇ってきた!
え、待って、どんな時だった!?
「その時の俺がコレです」と当時の自撮り写真を見せられ完全に思い出した。
「えっ!?あのアフロくん…ですか!?」
勝手にニックネームつけてた人だ。
会社にアフロヘアーが居たからびっくりしたの。
思わず声かけちゃったんだった。
「地毛ですって言おうとしたら電話が鳴って慌てて戻っちゃいましたけど。忙しい人なのに手伝ってくれたんだなって…その節はどうもありがとうございました、やっとお礼言えましたよ〜」
「いえ、こちらこそ何か中途半端に手伝ってすみませんでした」
「それと地毛というか天然パーマなんです、切らずに伸ばしたらあんな感じに」
「切るとだいぶ印象が違いますね、まさか同一人物だったとは。大変失礼しました」
「いえいえ、結構インパクト与えれました?」
人懐っこい笑顔でテンポ良く話してくれるので終始私も笑っていられた。
周りに座っていた女子チームとも仲良くなれて初めて繋がりを強く感じられたかも知れない。
「真田さん、そのスペックでその笑顔は最高過ぎません!?」
「え……?」
私が秘書課に移動してから入社した後輩たちばかりだが、驚いたことに私のことを女神と称して見かけるたびに拝んでいたんだそうな。
思わずお酒を吹き出しかけた。