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夏の終わりに
第20章 安息 ③
「カズ兄が待ってるから、あがろうか」

タイルに体を預け、浩人の髪に指を絡め、荒い呼吸を繰り返しながら必死に堪えていた千里は、浩人が離れていく気配と静かな声に困惑した。

去っていく後ろ姿を茫然と見送って、小さく鼻を鳴らす。
最後までされるのだと思っていたことが恥ずかしくて、してくれなかったことが悲しくて、視界がじんわりと滲んでいく。


―――どうなっても、知らないぞ。

そう言ったくせにっ
いいよ、って言ったのに……


体を繋げたら全てが解決するとは、千里も思っていない。
それでも、期待していたのだ。


助けに来てくれた浩人に、
襲われた千里以上に苦しみ、深く傷ついている浩人に、
気遣うように触れてくる浩人に、
千里を欲して、それでも「壊してしまう」と怯える浩人に……、

そこに深い愛があるのだと期待したのだ。


だからこそ、勇気を振り絞って恥ずかしいセリフも囁いた。
けれど、浩人は応えてくれなかった。
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