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夏の終わりに
第20章 安息 ③
拘束を緩めることなく、ジーンズの前を開けるのは不可能だった。しかし、自分のものを取り出さなければ、千里を貫くことは出来ない。

浩人はどす黒い葛藤を吐き出すように深く重い息を絞り出した。

力を緩めたら逃げられてしまう。
千里が消えてしまう。


何か縛れるものを……

浴室内に視線を巡らせ、千里の頭に頬を擦り寄せる。
ふと、康人が使っているボディタオルが目が止まった。

肌を洗うためだけに作られたタオルは荒く、ごわごわとした硬い肌触りをしている。
あれでは、千里に痣をつけてしまうかもしれない。


あざ……


千里の体に張りついているいくつもの痣が脳裏を過った。

千里をもう一度恐怖に震え上がらせ、一生癒えることのない深い傷を負わせる。
そんな残忍な仕打ちをしようとしているのだと、今更のように気づく。

それでもなお、醜い感情が体を支配しタオルを掴もうと手を伸ばしていた。
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