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BeLoved.
第20章 【彼女がその日の彼。2】
一夜明けて。麗さまは昼間も変わらず優しかった。普段通り家政婦業をこなすわたしに「痛みが出たり怠くなったら、無理しないで休んでね」そう気遣ってくれた。
「俺は飯さえあれば良いから」
それでも彼は彼。そしてわたしは家政婦。はい、一生懸命ご飯作りさせていただきます!たくさん優しくして頂いたご恩もある。決意を新たにしたのだった。
…でも、気がかりなことがひとつだけある。
────────
「ボンクラ来るまでドア開けないでね」
やがて迎えた夜。
急用で出掛けなければならなくなった麗さまを、玄関までお見送りする。この時間からわたしが一人になるのをとても心配してくれた。
もう一人のご主人様である流星さまはご不在。
実は流星さまはは一昨日から帰宅していない。
そう、わたしが気がかりなのはその事なのだ。
『今日は帰る』夕方やっとその連絡をもらった。けれど今は既に23時過ぎ。彼の姿はない。
今の時期は繁忙期なんだろうか。経営者がどんなに大変なのかわたしには想像もつかないけど…無理だけはしないで欲しいな。それ自体が無理かもしれないけど…。流星さま、意外と繊細…というか、丈夫じゃないから。
どうしてるのかな。会いたいな…
「未結ちゃん」
呼び掛けで我に帰った直後だった。
「、んっ」
重ねられた唇。今日は流星さまの日。相手の日にわたしへ唇のキスはしない約束なのに。
「顔見ればわかるからね」
「!ご、ごめんなさい…」
居抜くような瞳。キスは戒めだった。
まだ目の前には彼が居るのに
ここには居ない『彼』に焦がれたから。
麗さまも、流星さまと同じくらいの独占欲と支配欲を持っている。それは忘れていない。
でも彼は抑えてくれて、優しくしてくれる。それは彼の持つ心の強さ。弱いわたしは惹かれて止まないんだ…
麗さまは短く「行ってくるね」と囁き頭を一撫でしたあと、静かに出かけていったのだった。