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BeLoved.
第20章 【彼女がその日の彼。2】
「ふう……」
お見送りをし、リビングに戻ったわたしは一人ソファに腰を下ろした。家政婦としての仕事はとうに済んでいる。
これからどうしよう。もちろん流星さまを待っていたい。迎え入れて疲れを労いたい。
でも彼はきっと『寝ててよかったのに』と言うだろう。却って気を悪くさせちゃうかな。どうしよう。
「…。あれから一ヶ月かあ…」
ふと思い起こされたのは、先月のこと。
─────────
「ん…、んん…?」
草木も眠る丑三つ時。自室のベッドで寝ていたわたしは、ぽた…ぽた…と顔を打つ水の感覚で目を覚ました。
…何だろう。うっすら目を開けた先には…覆い被さる人影。…おばけ?!一瞬で覚醒したわたしは「ひぃっ!」と声にならない声を上げ、体を起こそうとした。
「…未結、俺」
「ぇあ"?!…あぁ」
影の正体は、流星さま。
水の正体は彼の髪の毛先から滴る水滴だった。
鼻をくすぐるのは微かな塩素の香り。いつもみたく泳いできたのかな?ドライヤー嫌いな彼のこと、また適当なタオルドライで済ませたのね。風邪を引くからやめて下さいと訴えてるのに。安堵からそんな事を考え始めていた矢先、彼は呟いた。
「未結……しよ」
それはもはや聞き慣れた申し出のはず。
でも今夜は少し様子が違う。
疲れきっていた。
単に泳ぎ疲れたとか、そんな類いじゃない。
肉体的にも精神的にも疲弊しているのが伝わった。
わたしが知るのは明朗快活でマイペースな彼。
だけど、それはあくまでプライベートの姿だ。
わたしが知らない社会人としての彼には
会社の長という重責がのし掛かっている。
わたしには想像もつかない世界で生きる彼。
わたしには想像もつかない苦労ばかりよね…
彼の手が寝間着を脱がしにかかる。それもいつものような手早いものではなく、両手でゆっくりと、感触を確かめるよう触れていきながら。
いつも強引な彼らしからぬその動きにほだされかかってしまう…が、だめだ。応えられない。
「やっ…流星さまっ…まって!」
「今日俺の日だし…誰にも文句言わせねーし…」
半ば譫言のような呟き。既に寝間着の前ははだけられてしまった。…やはり彼にははっきり言った方が効果的なのだわ。意を決したわたしは声を張り上げた。
「わた、わたし…生理なんです!」