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BeLoved.
第21章 【世界はそれを暴君と呼ぶんだぜ】
「密林ハンパねーな!やべーすげー楽しみ!」
…KYってきっと、こういうのを言うんだろうなぁ。
弾んだ声とはしゃぐ流星さまを見て思った。違う、彼はマイペースなだけなんだ。
「しかし麗、マジでおまえにベタ惚れだね」
用済みとなったらしい携帯を脇に置き、自分の世界から戻った流星さまはわたしの方を向いてそう言った。俺もだけど。と付け加えて。
あんなことがあったのに?首を傾げる。…ああ、見てなかったのね。しかしそれは間違いだった。
「何おまえ、麗にどんだけ恥ずいこと言わせたか、分かってないんだ?」
「?」
「襲っちゃうからそんな可愛い格好しないで、って話だったんだよ?!ちょい前までボコった人間の足掴んで、普通に車走ってる道路に無表情でほん投げてた麗がだよ?!俺笑い堪えるの大変だったんだからな!」
言ってるそばからもう笑ってる。言い終わる頃には完全に爆笑になっていた。
「こないだも自分の店のバイト半殺…まぁとにかく食うか寝るか喧嘩してるかで、口開きゃ死ね・消えろ・殺すぞしか言わなかった麗が!」
一度解放された笑いは止まらない。お腹を抱えて流星さまはひたすら爆笑した。わたしはただ眺めることしかできない。
そう言えば以前羅々さま達も『麗は荒れてた』と言ってたな…。流星さまは更に続ける。
「つまり言う事聞かせるにゃ力だったのよ。一番楽だし。でも未結にはしたくなかった」
「……」
「ま、ちょい片鱗見せちまったけどね。でもそんだけ未結は野郎ん中で特別で、離したくない存在ってこと。俺にもだけど」
流星さまの目付きが鋭さを増した。わたしの奥がきゅっとなった時だった。ベランダへ続くガラス戸が勢いよく開かれ、麗さまが顔を覗かせたのだ。その表情は険しい。
「おいボンクラ要らねぇ話すんなよ!」
「なー!"冷酷王子"なんて呼ばれてなー」
「…何年前の話してんの」
「俺も一服するから付き合え!麗くん」
な!と流星さまは麗さまを引っ張りベランダに出て行った。閉められた戸。彼らの背中を眺め思った。
今日また新たな一面を知った。
これからも知っていくだろう。
受け入れられる?耐えられる?
不安だった。
でもそれよりも、彼らはわたしを
自分の中の『特別』にしてくれる。
それがすごく嬉しかった。
わたしはもう離れられない。
改めて気づいたその気持ちが、一番怖かった。