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第22章 【むかしのはなし】

「ほ、本当なんですか?」

夜。麗さまのお部屋に、ふたり。
ベッドにゆっくり押し倒されたわたしは、上に覆い被さってきた彼に意を決して切り出した。

「…なにが?」

それに対しての返答は疑問だった。…いきなりだったから当然よね…。そしてその表情は険しい。怯むことなく…とはとてもいかず、しどろもどろになりつつ何とか言葉を続けた。

「…き、今日のお話…」

流星さまから聞かされた、麗さまの昔の話。
殴る蹴るの喧嘩に明け暮れ、相手を車道に放り投げたこともあった…とか。にわかには信じることができなかったのだ。流星さま、爆笑されていたし…

「…ああ、それ?…うん。してきたよ」

少しの沈黙の後、拍子抜けするくらいあっさりと麗さまは認めた。

「そんな…、…ひどいですっ」
「…昔の話だよ?」
「でも…っ!やりすぎですっ…」
「……」

彼は冷たそうに見えて、普段はとても穏やかで優しい。確かに目付きも口も悪くて怖いところもあるけど…決して誰彼構わず手をあげるような、乱暴な人ではないと思っていた。
その気持ちが裏切られたような気がしたんだ。

わたしの非難の言葉に、表情を変えないまま麗さまは無言で体を起こしベッドを降りた。

上体を起こしたわたしの視線の先で、彼はクローゼットまで足を進め何かを取り出し戻ってきた。手には…煙草の箱と、灰皿。

「…ごめんね、吸わせて」

デスクから椅子を引き寄せわたしと向かい合う格好で腰かけた彼は、珍しくわたしが同じ空間にいるにも関わらず煙草に火をつけた。

体はこちらを向いてはいるけれど、下を向いているせいで表情は分からない。けれど…苛立ちを押さえているのがわかった。

わたしも体を起こす。…が、どうしていいかわからず目線をシーツに落とし、身を縮こませるように体育座りをして膝を抱いた。

…どうしよう、怖い。

紫煙と、痛いほど重苦しい沈黙が部屋を包む。それを破ったのは……彼だった。

「…一年生の時だったんだけどね」
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