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BeLoved.
第22章 【むかしのはなし】
彼には助けてくれる人が居なかったのだ。
そのうち助けを求めることもしなくなって
…自分で自分を守るしかなかったんだ。
「…女にこの話したの初めてだよ。…ったくボンクラ要らねぇこと言いやがって」
舌打ちと、心底忌々しげな呟きが聞こえた。まだ充分愉しめるはずの長さだった煙草は灰皿に押し付けられる。
…彼の中のやり場のない気持ちまでも、そこでむりやり押し殺されたかのように。
「ご、ごめんなさ…」
「謝らなくていいよ。…ただ今ちょっと無理」
出てくるね。そう言い捨てると彼は立ち上がり、こちらを見ることなく歩き出した。
「…!…麗さま待…っ」
聞こえているはずの制止の声に、答えはない。
歩みが止まることもない。
怒らせたというよりも、傷つけた。
よく分からないけど、そう思った。
彼の気持ちを慮ることなく、事実だけをあげつらい、責め立てた。
流星さまのせいなんかじゃない。わたしが自分の意思で、してしまったことだ。
「れ……っ」
「今日は帰らないから。寝てて」
静かな口調。けど麗さまは最後まで振り向くことはなかった。
わたしの目前でドアは静かに閉められた。
まるで彼が、全てを断絶したかのように。
「……!」
なす術なく立ち尽くすしかなかった。
自分の浅はかさを、ただ呪いながら。