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BeLoved.
第2章 【彼ら】
「…私もどうしても都合がつかず、ご葬儀参列できませんでした。申し訳ありません。おばあ様には姉夫婦が長い間面倒を見て頂き、ありがとうございました」
流星さまに続き、頭を下げてくれた男の人。
彼の名前は、村上麗(むらかみ れい)。
名は体を表すとはよく言ったもので…彼はその名の通り、端正な顔立ちをしている。
そう、まさに眉目秀麗。彼もまた180を超える体躯で、けして華奢ではないのにも関わらず、初めて対面した時に女の人かと思ってしまったのは、わたしだけの秘密。
切れ長でくっきりの二重、長いまつげに縁取られたその瞳は…彼が掛けている黒フレームの眼鏡越しでも分かるほど、冷たい。
整った風貌と相成り、一見すると近寄りがたい。
でも、彼がわたしを見るときの目は…いつもとても優しい。
麗さまとの出会いは、一年前。
彼が一人で暮らすマンションに、わたしが単身で派遣されたのがきっかけだった。
彼も流星さまと同じ、27歳。
職業は……実は詳しく知らない。
しかし彼もまた、あまりに不規則な生活を送っていた。
わたしが彼の部屋を訪れていたのは、基本月曜から金曜の昼間。日勤の方なら大体不在だろう時間。
けれど彼はその時間在宅が多かったし、出掛けるときもほとんど私服。渡された合鍵を使って入ったわたしが、朝帰り(もはや昼帰り?)してきた彼を迎え入れることも屡々だった。
かといって夜のお仕事をしている訳でも(夜に出ていくこともあったようだけど)ましてや無職という訳でもない。
心配になり尋ねたところによると、以前は昼の勤めに出ていた。今は自営業で、主に不動産を扱っている、とのこと。業務をこなしているので、昼は在宅が多いらしい。
麗さまはそれ以上答えなかったし、わたしも聞かなかった。
彼の声と表情は優しく、穏やかだった。
『気遣ってくれてありがとう』と、頭を撫でてくれた手も、暖かかった。
しかしその瞳は、それ以上の詮索はするなと警告していた。