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BeLoved.
第23章 【これからのはなし】
「未結、全然作ってくれないんだもん。ずっと待ってたのに」
「え?!なっ…い、言って下されば…!」
雨降って地固まるとはよくいったもので。わたしたちの間の空気はすっかり軽やかなものになっていた。
よくよく伺ってみればカレー嫌いというのはわたしの誤解。むしろ大好きだと教えてくれた。もう3杯目だ。
「美味しいから」
確かに好きではなかったけど、わたしと初めて出会った日。わたしが作ったカレーを食べてから変わったのだそうだ。それを聞いて嬉しくて。ますます胸がいっぱいになった。
「米ぶち込んで鍋ごと食べていい?」
「そ、それはちょっと…」
「未結ー見ろー!かわいーだろ?!」
突然飛び込んできた明るい声。…流星さまだ。出ていった時と同じく、この世の春とばかりに戻ってきた彼の手には…何故かメイド服。
触り心地のよさそうな黒地に、襟や袖にふんだんにあしらわれた白色のフリルとレース。
ワンピースらしいその丈は、気のせいか少し短めだけど…可愛らしいデザインだった。
「わあ…っ!どなたが着るんですか?」
「は?おまえに決まってんだろ」
「え?」
わたしが?目が点になった。
確かに可愛いけど実用的ではないというか、汚さないように却って気を遣ってしまいそうなんだけれど…。
考え込んでしまったわたしを素通り、流星さまは今度は麗さまに自慢し始めた。
「なー麗ーいーだろー。なー」
「俺そういう露骨なやつ嫌い」
「つまんねー奴。あ、これな」
釣り要らねーから、と麗さまの脇に置かれたのは現金。流星さまがさっき姿を消したのは、自室にこれを取りに戻ったため。届いた荷物はこの服だったのね。そして今まで戻らなかったのは、電話をしていたからだった。
「──で、お預けってな。ひでーわ」
しかもこの後、また出掛けることになったらしい。彼にとっての宝物(?)であるメイド服はわたしに託された。実につまらなそうな表情で。
「空気読めって感じだよなー」
…それをあなたが言っちゃうんですね…苦笑しつつ汚すわけにはいかないそれを胸に抱き、自室に置いてくると断りを入れ廊下へと出た。
「…流星」
去り際に麗さまの声が聞こえた気がしたけど。駆け出した後のわたしにはそれ以上聞き取れなかった。
「なに」
「…俺もお前も"人間"になれてきてるぞ。未結に感謝しろよ」