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BeLoved.
第30章 【あなたがわたしをこわしたいなら】
「──えっ…?」
彼がくれる全ての愛撫が途絶えたのだ。
突然。何の前触れもなく。
膝は床に着いたままで居るものの、麗さまはわたしとの間に距離を作って。口元を手で拭っている。
「時間だ」
短く呟いた彼は…どこから取り出したウェットティッシュでわたしの肌を払拭してくれた。
衣服も直されて、あられもなく開かれたままだった脚も下ろされて。普通に腰かけている体勢に戻された。
言葉と所作が物語るのは…行為の終息。
「…え…?!う…うそ…っ」
「ごめんね。行かないと」
立ち上がった彼を見上げるわたしの眼差しにも心中にも、戸惑いしかなかった。
…本当に、こんな状態で放り出されるの?
欲しくて欲しくて堪らないこんな状態で?
「帰りは明日の昼になるかな」
更に投げ掛けられる残酷な言葉。息を飲んだ。
身も蓋もない言い方をしてしまえば、わたしのこの『疼き』を鎮められるのは世界に2人。
そのうちのひとり、流星さまは…不在。お帰りは4日後の予定だ。
もうひとりは目の前の…言うならば『疼かせた』張本人である、麗さま。でも彼は去って行ってしまう。次に会う時には彼はわたしを抱けない。
…つまりわたしは、この疼きに苛まれなければならないの…?自分では届かないこの疼きに、ひとりで?
「や…っ、ぃや…っ、いやです…っ!」
……できるわけない。壊れてしまう。気が付いたら彼の服の裾を掴み、縋りつくように見上げていた。
──貴方が欲しい
目は口ほどにものを言う。
多分、勘の良い彼には伝わったはず。
「気を付けてね」
「──!」
それでも彼には『通じなかった』。
いつもみたくわたしの頭を撫でた彼は、そのまま本当に部屋を出ていってしまったのだ。
「れ…っ…、…うそでしょ…?!」
残されたわたしはひとり涙声。
初めての中断。初めての放置。
頭も気持ちもついてこない。
ただただ、彼が残した疼きだけが色濃く存在を主張する。
必死だった。わたしの頼りない理性が
彼が残した疼きに、壊されないように。