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BeLoved.
第32章 【白い檻】
「!」
「ずっと、なに?」
切れ長の瞳がまっすぐわたしを見ている。見透かされてる。わたしの言いたいこと。そして──わたしの中の、疼きも。
右の頬を掌がそっと包んだ。大きくて骨張ってしなやかで。
わたしとは違う『男の人』の手。
「…アイス、俺にもちょうだい」
「…ぁ…、…」
言葉とは裏腹に彼が求めてきたものは、唇。まるで微かに残された香りと、柔らかさを楽しむように、それはゆっくりと触れあった。
アイスで冷やされた唇にぬくもりが広がる。
…あったかい。…きもちいい。気づいたら目を閉じて浸っていた。本当は、許されないのに。
「…ん、ぅ……」
ちゅ…ちゅ…と小さな音を立て、優しく啄まれる。そっと挿し込まれた舌が絡む。それは痺れるほど甘くて濃厚で。今の今まで口内がミントの爽やかさで満たされていたのが嘘のように感じさせた。
──それは彼のせい。
「…もっとちょうだい」
「んん……っ!」
囁きのあと、口付けが一気に深くなった。身を乗り出した彼と壁の間に体を挟まれたうえに、顎に添えられた手が逃げることを許さない。
「ふぁ…っ」
彼のキスはいつもたまらなく甘くて美味しい。
しかも今わたしは『おあずけ』をされた状態。
わたしの中の深く深い部分…疼きに滲みていく。絡み合う舌に軽く歯を立てられるのも、歯列をなぞられるのも、交ざり合った唾液が喉に落ちていくのも、みんなみんな気持ちよくて…全身がとろかされていく。
──だめ、だめ、だめ。今日は『彼』の日。彼の日じゃない。拒絶しなければならない。頭はわかってる。
だけど──体も『わかって』いた。
そして──彼も『わかって』いる。
「…未結ちゃん」
今日は『彼』の日。そして
わたしはもう抗えないって。
堕ちたくてたまらないって。
「"ずっと"、なに?」
『言え』それは口に出されてはいない。
だけど彼の瞳は確かにそう命じていた。
……もう…だめ……
「ほし…かった…」
恥じらいも何もない、はしたない言葉。
彼の表情に艶が差した。
「…流星には内緒だよ」
頷いたわたしに与えられたのは、触れるだけの口づけだった。 …きっとこれから先も何度だって思い知るんだ。わたしは彼のくれる快楽に…違う。彼に…麗に、堕ちてしまったんだって。