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BeLoved.
第4章 【3LDK】
「未結、ここだよ」
決まった話というのは、流れるように進むらしい。
家政婦になることに同意した、その翌日。
わたしは自宅まで迎えに来てくれた彼らに連れられ、都内M区内の中心に位置する8階建てのマンションにやってきた。
「…わぁ……」
入口前に停められた車を降り、おのぼりさん宜しく周りを見上げてしまう。
一応わたしも23区内に住んではいたけど…景色が全然違う。周りは高層ビルに囲まれ、ところどころに植え込まれた緑は整備されて…まさに都心といった感じだ。
「じゃー俺、車置いてくるわ」
「未結、おいで」
「あ…」
ここまで運転してくれた流星さまはそう言い残すと、駐車場へ続くという地下道へ走り去ってしまった。
まだろくにお礼も言えてなかったのに。
麗さまに手を引かれ、マンションのエントランスに足を踏み入れる。ここは彼の『持ち物』なのだそうだ。
コンクリート造りで、グレーが基調の内装。壁は白に近い明るさだけど、床は濃い色。殺風景でまるで生活感がない。
けれど無駄のないその様相は、かえって洗練された雰囲気を醸し出していた。
わたしの住んでいたアパートなんかとは全く違う。なんとなく居心地の悪さを感じ、落ち着かなかった。
「ここ、ワンフロア一世帯だから。俺らの部屋がある8階が最上階。間取りは3LDKだよ」
説明を半ば上の空で聞いているうちに、エレベーターのドアが開く。
建物内廊下を少し歩いた先に、『その部屋』のドアはあった。
「どうぞ」
開かれた先は…広い玄関。背の高い下駄箱の影は…物置だろうか。空間があった(後で聞いたところ、シュークローゼットというらしい…)。
横を向くと、続いていたのは広くて長い、焦げ茶色の廊下。
「…わ…」
乳白色の壁と天井に囲まれた室内は、エントランス同様、無駄のない、洗練された作り。
まるでモデルルームのようで、みっともなくもキョロキョロと見渡してしまった。
麗さまはそんなわたしの様子に苦笑しながら靴を脱ぎ、スリッパに履き替えた。
「おいで。案内するから」
わたしの分のスリッパも並べてくれながら促してくれる。後に続こうと、慌てて靴を脱ぎ「お邪魔します」と口走った時だった。
「未結ちゃん」