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第36章 【暴走】

「…っ」

問いを投げ掛けられたまま解放された。無言のままシーツに俯せの身を投げ出し、呼吸を整えるべく酸素を貪る。───でもそれすらも、麗は許してくれない。

「来て」
「…っ」

ベッド縁に腰掛けた彼の上に命じられるまま跨がり、静かに腰を落としていく。
剥き出しの彼自身をゆっくりと、自分のなかに沈めていきながら。

「…あああ……っ」

彼の存在が増していくに比例して、込み上げる快感。嬌声を漏らすだらしない顔を晒すことに恥じらう余裕なんかなかった。

「あ…、あっ、…うぅん…っ」

とろとろに溶かされた秘部は彼を受け入れた。熱くて堅いそれは重力のおかげで易々と最奥に届いてしまう。『わたしの好きなところ』に。


「はっ……あぁんっ…」

小柄なわたしの足は、床に届かない。熱の中心、彼とわたしが繋がった部分だけが支え。
滴る愛液も量を増し、少し身じろいだだけでも。ぴちゃんっ…と卑猥な水音をより響かせる。

──気持ちよくてたまらなくて。刺激される度に意思と関係なく、ぴくん、ぴくん、と全身は跳ねてしまう。小刻みに突き上げられてしまえばもう快楽に…彼に身を委ねるしかなかった。いつもの様に『わたしが満足する』まで。
──でも今は違った。


「…っ！？やだ…っ」

全ての動きが止まったのだ。
一瞬で。何の前触れなく。熱だけ残して。

「…おねが…っ、…動……て」

突然の事態についていけず、身を寄せて哀願した。──それはひたすらに快楽をねだるように見えたかもしれない。でも構っていられる余裕なんかなかった。

繋がったまま疼き続ける箇所に、彼の感覚と熱だけがじんじんと絶え間なく伝わり続ける。それは苦しくてもどかしくて…切なすぎたから。

「れ…っ、ぉねが…っ、れぃさまぁ…っ…」

そして今の彼はわたしを『見ていない』。
彼の視界にわたしはいない。ただ身体が繋がっているだけだ。

それにも…ううん、それにこそ耐えられなくて。ひたすら縋りついた。こっちを見て。『わたし』を見て──そんな思いで。

その醜態に加え、全裸のわたしとは真逆に…繋がるために寛げられた下衣だけが乱れているだけで、きちんと服を着込み普段と全く変わらない彼。

その差はまさに、わたしが『彼のもの』であることを知らしめ…彼との主従関係を象徴しているようだった。