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BeLoved.
第36章 【暴走】

言葉に詰まった一瞬の隙。視界が揺れた。
直後、わたしは彼と繋がったままベッドに押し倒された。

「…ま、それは今はいいや」

再び近くなる『彼』の香り。けれど目の前にいるのは彼。──再び突きつけられる現状に、頭と体の芯が熱くなる。それが罪悪感だけじゃないのはもう──わかっていた。

「て…、…まって!…ひあ…っ!」
「だめ。またない」

眼鏡を煩わしそうに外して言い捨てた彼は。わたしの両足を膝で曲げさせ胸の位置まで押し上げた。それは初めて麗と結ばれたときと同じ体勢。座っていた今までより、より彼の意思でわたしを奥の奥まで征服できる体勢。

「やあぁっ!あぁんっ…!」

案の定、深みまで彼は易々と辿り着き、存在を主張する。初めての…あの時のような優しさはない。あるのは──喰らい付いて、離さなくて。わたしを内側から貪り尽くす荒々しさ。

「逃げないで」
「!」

反射的に身を引いてしまったことを咎める言葉。そして彼の右手はわたしの左手首を掴んだ。傷痕の上から、強い力で。冷たい瞳で見下ろしながら。


──怖い。全身が強張っても、顔を逸らさずにはいられなかった。──なのに。

「ひあっ……ぁんっ」

そこにあるのは恐怖だけじゃなくて。

「あ……っ、んん──…」

わかる。確実に、存在しているもの。
それは彼がわたしを貫く毎に色濃くなって。

「未結、こっちむいて」
「ふ…、ぅん…っ」

従った先に待っていたものは、キス。それは甘くて優しくて、いつも彼がくれるのと変わらないもの。それは体の強張りを解いていくには充分すぎて。

「ん…、う……」

手首を掴んでいた手が肌を滑り、指と指も絡ませあって繋がれる。──優しく。まるで、お互いに残された傷痕が重なるみたいに。
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