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BeLoved.
第36章 【暴走】
「流星の一番大事なものは、未結。わかってるね」
ベッドに力なく身を投げ出し。頬を紅潮させ。涙と涎で顔中を汚し。肩で息をするわたしの真横に腰を下ろしたのは。
もう普段と何ら変わらない出で立ちに戻った麗。彼はあの激しさが幻だったかのように落ち着いた声で語りかけた。
「次に大事なのが、会社。だから失くす…三歩手前かな。追い込んでやったの。これでもかなり譲歩したんだよ」
「……」
彼の手が髪に触れる。あの強さが嘘のような優しい手。
──いつもの彼の手。
「本当はボンクラの存在自体消したいんだけど、しない。どうしてかわかる?未結」
「…お友だち…だから…」
「使えるから」
冷酷な即答が胸に刺さる。
「──でも一番の理由はね、“未結が流星のことを好きだから“だよ」
「……!」
「流星が消えたら、結局悲しむのは未結だし、焦がれる気持ちも強くなるよね。……勝ち逃げなんかさせないよ」
そう言うと、彼はわたしに覆い被さった。
そしてその瞳にわたしだけを写し、はっきりと。彼の全てが込められたその言葉を告げたのだ。
「どんな未結でも俺なら愛せる」
彼の本質。気に障るものに容赦はしない。
彼は『彼』よりも強引で冷酷で
『彼』よりもずっと『怖い人』 だ。
ああ、でも。でも……
この人もこんなにもわたしを求めている。
この人もこんなにもわたしを欲している。
もっと求めて。もっと。
あなたが壊れるほどに。
『彼』同様、そんな感情を抱いているのも事実だった。
本当に、おかしくなってしまった?…それでもいい。
こうして、大好きな人といられるなら。
「……」
力なく伸ばした腕を彼の首に回し抱きついて。わたしはそのまま吸い込まれるように眠りに堕ちた。
頬に触れるあたたかく優しい手と、かろうじて耳に届いた最後の言葉に、からだの奥の底から…ぞくぞくとするものを感じながら。
「…俺は未結のものだからね。愛してるよ」