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BeLoved.
第37章 【暴走の果て】
──身体中が重い。あつい。
呼吸もままならないし、身をよじるのも辛い。
肌への感触から、いま自分が布団の中にいるということだけは、辛うじてわかった。
わたしはどうなったの?…彼らは?そう思った瞬間、胸は突き刺すような痛みに苛まれた。
自分の身に起きたこと。彼らがわたしにしたこと。……わたしが彼らにしてきたこと。
ぼんやりとしたそれらはどんどん形を成し、フラッシュバックのように襲いかかってきた。
「……っ、……っ」
怖い。苦しい。つらい。叫びたくても声がうまく出せない。 ただただ、絞り出すような呻き声を吐き出すだけだ。
わたしは一体どうなっちゃったんだろう…
「……、」
微かに声が聞こえた。人の気配は感じるから、近くにはいるはず。でも今のわたしの耳にそれは遠くて。
「…、…」
…なにやら会話が交わされているようだった。…「熱が40度近い」「魘されている」「椎名が解熱剤を注射した」「 心配ない」よくよく耳をすませてみれば、その内容はわたしに関することばかりだ。
どうやらわたしは高熱に浮かされているらしい。普段滅多に熱なんか出さないから、余計に辛く感じたのか……
流星さまの異母兄で、お医者様でもある椎名さままで駆り出してしまったらしい。兄弟仲はとてつもなく悪い上に、麗さまだって椎名さまとは極力関わりたくないと言っていたのに。
ああ、わたしはどこまで──…
自己嫌悪に陥ったその時だった。
「…っ?…」
額になにかが触れた。──大きくて、乾いて、固くて、でも、暖かくて柔らかいもの。──大好きなもの。
──知ってる。これは彼の手だ。
わたしに触れて、撫でてくれてる。
「……」
──きもちいい。
苦しさも痛みも消えていくみたい。
不思議。
なによりもわたしを傷付ける手は
なによりもわたしを癒してくれる。
なによりも、わたしが傷付けていても。
こんな風に、優しく触れてくれるんだ。
「……」
目を閉じた時には、呼吸は楽になっていて。
やがてやってきた睡魔の波。迷わず乗った。
触れた手はそのままだった。わたしが眠りに堕ちるまでを見届けるように、見守るように。だから、最後のその言葉を、わたしは否定できなかったんだ。
「──ごめん、未結」