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BeLoved.
第38章 【罪と罰。1】
「なにビビってんだよ、行くぞ」
無事に帰宅を遂げた翌日…の昼過ぎ。わたしは流星さまに連れられて、その…どういう訳か…同じM区内にある高級ホテルにやって来た。
「は?おまえが言ったんだよ?」
入口に横付けした車を降り、わたしが座る助手席ドアを開けてくれた彼に理由を訊いたらこの回答。しかし全く身に覚えがない。困惑するわたしに、彼は呆れ顔で言ったのだった。
「3人でお出かけしたい、って」
──────
よくよく話を聞けば、遡ること数日前。わたしが高熱に浮かされていたとき。看病してくれた彼らに、何か欲しいものはあるかと尋ねられ、魘されつつもはっきり『3人でおでかけしたい』と告げたそうなのだ。記憶にないけど…
「流石に3人一緒ってな無理だから、別々。で、俺が空いてんの今日明日しかねーの」
理解した?と、助手席を覗き込むように小首を傾げたくらいにして。それでもなお恐縮し動けずにいるわたしに彼は溜息をついた。
「いーから早く降りろよ。車動かせねーだろ」
ふと見れば、彼の背後には困り顔で苦笑するホテルマンさんの姿が。後が詰まり始めているらしい。慌てて荷物を掴み飛び降りた。
─────────
場違い感が半端なものではなかった。
煌びやかなロビーは広く、大勢の人で賑わっている。ちらほら外国の人も居るみたい…みんな身なりが整っていて洗練されている。
かくいうわたしと言えば…ほぼほぼ普段着だ。だってまさかこんな所に連れてこられるとは思わなかったから。チェックインしている彼を待つ間も、心なしか好奇の視線が向けられているのを感じてしまう。堪らなくて俯いた。
「未結悪りー。お待たせ」
…戻ってきた彼だって、呑気な声とは裏腹に着こなしているのはフルオーダースーツだ。
何となく胸の辺りがモヤモヤしてしまう。ちゃんと伝えてくれればわたしだってそれ相応の格好をしてきたのに。だってこれじゃ、隣を歩く彼にだって恥をかかせてしまう。
「俺別に気にしねーよ?」
「わたしが気にします!」
部屋に向かう間はちょっとした言い争いになった。飄々とかわされてしまったけど。彼いわくそもそもここを選んだのは、館内施設が充実していて短期滞在でも楽しめるから。どうせならのんびりしたいから、宿泊。───なにより。
「俺のベッド、もう使えねーからね」
その一言で、わたしは全てを飲み込んだ。