この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
BeLoved.
第39章 【罪と罰。2】
「…未結、ちょっとごめんね」
すっかり日常を取り戻した、ある朝。
出勤された流星さまと入れ違いに帰宅した麗さまと、二人で朝食をとり始めた矢先のことだった。
向かいに座っていた彼が急に立ち上がったのだ。何故か口元を押さえている。
「どうかされたんですか?」
「……」
「麗さま?」
答えはない。無言のまま足早に去っていく後を追って…辿り着いた先は、トイレ。
駆け込んだ彼は便器の中蓋ごと叩きつけるように開くと、そのまま踞り………嘔吐した。
「うえ"ぇっ…… …かはっ…」
「れ、麗さま?!大丈……ひゃああっ?!」
開け放たれたドアから中を覗き込み声をかけ、咳込むその背を擦ろうと近付いた瞬間。目に飛び込んできたその光景はあまりの衝撃だった。
本来の白さを塗り潰すように、真っ赤に染まった便器と溜め水。その飛沫で汚れた、同じく白いタイル張りの壁。
焦げ茶色だから傍目ではわからないけど、床にも飛び散っているに違いない。
嘔吐じゃない。吐血だったのだ。
彼は壁に凭れると、崩れるように床に座り込んだ。肩で息をしながら、片手でズボンのポケットをまさぐりスマホを取り出すと、わたしに差し出した。
「…未結ごめ……、救急、呼んで…くれる?……ちょっと…やばい…」
鈍い赤色に染まった、白いスマホ。わたしが震える手でそれを受け取ったと同時に、彼は壁に背を付けたまま…倒れ込んだ。
「れ…っ、…っ、麗さま!?」
呼びかけても、肩をゆすっても反応がない。…気絶してしまったのだ。
「うううそでしょ……!?やだやだ…っ…!!」
血を失ったせいか蒼白している顔面。
赤く染まった口元。苦痛に歪む表情。
それらを目の当たりにしたわたしは完全にパニックに陥った。それでも震える手で何とか画面を操作し、泣きじゃくりながら電話をかけたのだった。