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BeLoved.
第39章 【罪と罰。2】
「───いやー参った。未結泣きながら電話してくんだもん。なに聞いても『麗さまが麗さまが』しか言わねーし。遂にお前が牙剥いたんかと思ったわ、麗」
「…意味わかんねぇ。なんだ、牙って」
あれから数時間。時刻は既に夕陽が差し込む頃合いになっていた。
救急搬送された麗さまは、検査の結果胃潰瘍と診断され、十日間の入院を余儀なくされた。
処置を終えた彼が通されたのは、個室。お風呂にトイレにソファセットまで付いている広いお部屋だ。
窓際に置かれた医療用ベッドの上、横たわる彼の片腕は点滴に繋がれている。
反対側の手で、赤茶色に変色した(!)スマホを操作しているその表情は…仏頂面だった。
純粋に具合が悪いせいもあるけど、何よりも…
「絶飲食だって」
…そう、お食事がとれないせいだ。そんな忌々しげに呟かれても、患部は胃なのだから仕方ないですよ…。
でも、食べることが命の彼にとっては死活問題なのだ。
そんなわたしはというと。
ベッド脇のソファに腰を下ろし、今回の入院のために持ち込んだものを鞄から取り出している真っ最中だ。
ここからでも麗さまの表情が伺える。着替えや下着を膝上で畳み直しながら声をかけた。
「頑張りましょうね。退院されたら、麗さまの食べたいもの、何でも作……あれ…っ?」
喋っているうちに、喉の奥が熱く痛んだ。
そして…涙が一筋、頬を伝っていった。
「は?おまえ何泣いてんの?!」
「…なに!?どうしたの、未結」
彼らの驚愕した声が聞こえる。
どうしたのか。自分でもわからない。
でも…きっと、安堵したんだ。
彼が今こうしていられることに。
意識を失った彼の姿と、あの日…
最期の日の、おばあちゃんの姿。
それが重なってしまったんだ。
「何でもないです…。流星さまもすみません、ご心配おかけしました」
麗さまが治療を受けている最中。先の言葉通り、わたしは流星さまに電話をかけた。自分の携帯から、錯乱状態のままで。
只事ではないと察知した彼は、わたしをなだめすかしながら状況を聞き出すと、夜までの予定を全てキャンセルしすぐさま駆け付けてくれた。
そのうえ一旦おうちに戻り、入院準備をするのも手伝ってくれた。『会社の事は心配すんな』『俺は何っ回も入院してるから必要なもんはよく判んの』なんて明るく言ってくれたけど…うぅ、申し訳ない。