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BeLoved.
第39章 【罪と罰。2】
「お?今日は何もいねーな。って、未結もいねーし。おい麗起きろー。iP◯d持ってきてやったぞ感謝しろー」
翌日の午後。熟睡していた麗さまを残し、わたしは一階の売店で買い物を済ませてきた。
病室に戻ろうと引き戸の手すりに手をかけると、室内から流星さまの声が。今日も来てくれたんだ…っ。
静かに中に入り、買ったものを胸に抱いたまま戸に凭れた。会話を邪魔したくなかったから。
死角になっているため彼らの姿は見えないけど、ベッドの軋みと衣擦れの音で、麗さまが体を起こしたのがわかった。
「でさー、病院やっぱ面白れーわ。昨日も帰り際ちょっとやべー幽霊に追われて」
「…りゅうくん」
「何だよ最後まで聞…りゅうくん??」
「…俺、未結に嫌われたら生きていけない…」
!!
麗さまが発したそれは、今まで聞いたことがない、か細くて、弱々しい声だった。流星さまも驚いたらしく、軽く……ない力で、たぶん、頭…を叩く音が響いた。
「何だよ気持ち悪りーな!あー分かった。ヘタ麗お前、ココでヤろーとして拒否らんたんだろ?サイテー。サカりすぎー。変態」
「テメーにだけは言われたくねぇ!」
あ、いつもの麗さまだ。寝惚けてたのかな…?その後も彼らは、何だかんだと言い合っている。
「ふふ…っ」
そこにいたのはやっぱり二人の『男の子』。
相変わらずのやりとりに顔を綻ばせた…ら。
「つか居ねーと思ったらお前に憑いてたわ、この部屋に居た女の幽霊。今そこの隅に戻ってきた」
「知らねぇよ」
「……」
背筋に走る寒いもの。全く油断も隙もあったものじゃない…。え、なに?麗さまおばけに取り憑かれてたの?いつから??ままままさか、昨日のあの…あれも、そのせいで???
──なんて、一瞬不安のどん底に叩き落とされかけたけれど。
『大好きだよ、未結』
あの時のあの言葉。なによりあの瞳は他の誰でもない、麗だった。彼がいつも向けてくれる『わたしだけ』が知っている瞳だった。
だから、"大丈夫"──。
「…ご気分いかがですか?麗さまっ」
今までとはまた少し違った心持ちと表情で。
わたしは彼の元へと戻っていったのだった。