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BeLoved.
第40章 【『彼』の居ぬ間に。】
早いもので、明日は麗さまが退院される日だ。
もうすっかり回復した彼は予備のスマホをフル活用し、病床から可能な範囲でお仕事を再開している。
食事も絶食から点滴、流動食、おかゆと少しずつ固形物に近付いてゆき、今ではもう普通の食事だ。それでも彼には物足りなくて不満なようで…
「退院したらカレー作ってね」
「はいはい…」
「約束だよ」
連日このやり取りを交わしている。病み上がりにそんな刺激物、大丈夫なのかしら…。一応お医者様にも確認してみるけど、きっと止められても押し切られちゃうんだろうな、彼とわたしのことだから。
「それじゃ…明日は3時に来ま」
「未結」
西陽が射し込み始めた頃。持ち帰る洗濯物をまとめた鞄を持ち、部屋を後にしようとしたら腕を取られ抱き寄せられて。耳元で囁かれた。
「未結のことも食べさせてね」
「…!」
「約束だよ」
甘く響く声と、耳介に触れた口付け。腰の辺りがざわついた。
実はわたしがここに泊まったのは、彼の入院初日だけ。さすがに連日連夜居座る訳にいかず、日中顔を出しては夕方には帰宅する日々を送っていた。
その間その…所謂『そういうこと』をしたのは、初日の晩だけだ。以後はキス止まり。それも、頬や額への触れるだけのもの。
だから今の彼の言葉に…体の奥が反応してしまった。まったくもう…。我ながら恥ずかしい。
─────────
「ただいま戻りま」
「おー、おかえり、未結」
「し…ぅえっ?!」
誰も居ないとわかっていても発してしまう、習慣になっている掛け声。まさか返事が来るとは思わず、後半は変な声になってしまった。
ひょいっと自室から顔を出したのは、流星さま。彼もここの住人なのだから居たって何の不思議はない…が。
「い、いつ戻られたんですか!?」
「昼過ぎー」
彼は麗さまが入院された二日後に海外出張に出ていた(これは急にではなく前から決まっていたもの)。家どころか日本を離れていた彼が今、目の前に。それだけならまだしも…
「お帰りは明々後日じゃ…」
「そーなんだけど切り上げて来たわ」
「急用ですか?」
何かあったかな。抱いた一抹の不安はあっさり覆されることになった。
「や、邪魔者居ねー最後の夜だから」