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BeLoved.
第40章 【『彼』の居ぬ間に。】
くどいようだけど、ここは彼の部屋。
台所からは少し離れた位置にある。
…なのにしっかり耳に飛び込んでくる、異音の数々。お皿が割れるもの、何かがぶつかり合うもの、「痛って!!」という、悲鳴(?)。
「…うーん…」
一体どんな惨状が繰り広げられているのか…。諸々の後始末の事を考えたら、やはりわたしが行った方がいい。頭はそうしたがっているんだけど…いかんせん身体は言うことを聞かない。
「っ、ゃだ、もぅ…っ」
怠さに加え厄介なのが…少し身動いだだけでも甦る彼の感覚。内側から染み渡ってくるそれは、否応なしに全身を敏感にさせて。剥き出しの肌に寝具が擦れるだけで反応してしまう。
「…ぁ……」
まさかと思い秘部に手を伸ばしてみれば…濡れて、熱を帯びていて。シーツにシミを残してしまわぬよう慌てて寝返りを打ち横を向いた。
…本当に、いつからこんなにいやらしくなってしまったんだろう、わたしの身体。無性に恥ずかしくなり、きつく目を閉じ現実から逃げた。
─────
どれくらいそうしていたのか。いつしか、いい香りが鼻をくすぐり始めた。この香りは……
「未結ー!できたぞー」
声の直後、勢いよく開かれたドア。現れた彼の手には…スプーンが2本突っ込まれた大皿。
ベッドサイドテーブルに置かれたそれは…山盛りのご飯と、どう考えても大きすぎる切り口の野菜が投げ(?)込まれたカレーライス…らしきものだった。
…いや、さすがにそれは言い過ぎだ。確かに見てくれは良くはないけど色も香りも間違いなくカレーだし、肝心の味だって食べてみなければわからない。
「これ…流星さまが?」
「うん。指なくなるかと思ったわ」
「はは…っ」
手の指全部に巻かれた絆創膏が物語るように、不器用で、料理なんかしようともしなかった彼が頑張ってくれた。それが何より嬉しかった。
「やべ、クソ不味いな。残していーよ」
「!や、そ、そんなことないです…」
…だから、野菜の大半が生煮えだったのも、所々にルーの塊が隠れていたのも平気(どうしても無理な分はお言葉に甘えたけど…)
「風呂入ったらセックスしよーな」
「またぁ…」
わたしを軽々抱き上げ無邪気に言う彼にむくれつつ、素直に身を委ねた。彼の言う『邪魔者がいない』時間はもうじき終わってしまうから。
翌日、台所の現実を見て、最高に脱力するとは知りもせずに。