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BeLoved.
第41章 【密室の獣】
いつぶりかな。
視界が彼で覆われる『この位置』から
彼を見上げるのは。
「未結」
二人きり、肌を重ね合わせる時だけの
艶を纏った声で、名前を呼ばれるのは。
「れ…、っあ!」
「…っ」
指先で軽く触れただけ。慣らされていない『そこ』に
彼は入り込んだ。…かすかな痛みを、刻みつけながら。
──それは、より鮮烈に自分の感覚を知らしめるため。
「たくさん愛されたね」
「あ…」
「流星のかたちになってる」
─そして、わたしに残された『彼』の全てを消すため。
繊細な長い睫毛に縁取られた、彼の赤墨色の瞳。
その『色』が、僅かに。しかし確実に変わった。
…ううん、違う。きっと『戻った』のが正しい。
…いつぶりかな。
計り知れない独占欲と強引さを併せ持つ
『本当の彼』と、こうして対峙したのは。
なのに、以前ならあったはずの焦りも恐怖もないのは
何故なんだろう…?…そう、あるのはむしろ…
──だめ。『それ』を認めては、だめだ。
頭の中で何かが叫んだ。そしてわたしはそれに従った。
「大好きだよ、未結」
彼の瞳がわたしを見下ろす。
それは『彼』と同じまっすぐな眼差し。
わたしを射抜き、囚えるもの。
頭の中で叫んだ何かはきっと、理性。
…驚いた。
この期に及んでもまだ、そんなものが残っていたんだ。
かくして解放されたがっていた『本当のわたし』は
胸の奥深くで、わたしの意思で、押し殺された。
────────
「あっ……んうぅっ…」
慣らされていなくても、『慣らされた身体』は。
ご主人さまを受け入れたが最後。喜悦に満ち、頑なさを失い、柔らかくしなり、あたたかい蜜を滴らせた。
とろけていく。
もっともっと深くまで入ってきて欲しい。満たされたい。
満たされて欲しい──わたしの、雌が疼く。
「…前より感じやすくなったね」
そんなわたしの全ては今、『彼』にどれだけ愛されたのかを如実に物語るもの。そしてそれは彼の──麗の、雄を煽る。
「…て…待って…! 麗…っ」
「覚悟して、未結ちゃん」
重ねられたその唇は。わたしと…わたしに残る『彼』。それら全てを喰らい尽くすと告げているようだった。