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BeLoved.
第41章 【密室の獣】
「!!」
『あんっ!』
その声と、画面の中の彼女が一際甘い声を上げたのはほぼ同時。恐る恐る振り向いた先には…湯上がりで、下着一枚姿の彼。頭に被ったタオルで髪を拭きながら、TV画面と…タブレットを握りしめたまま固まるわたしを交互に見やっている。
「こ、これは…っ!」
お約束過ぎる展開に慌てふためくその様子はまるで、いかがわしい本を母親に発見された時の、年頃男子のよう。
…いや、知らないけど。そうこうしているうちに近付いてきた麗さまは、わたしの手からタブレットを取るとそのまま隣に腰を下ろした。
「しかもこれ、女の子向けのだね」
「え?」
ほら、と指し示されたタブレット画面には番組の詳細があった。『初めてのお泊まり』。選んだ決め手になったタイトルの脇には、確かに『アダルト/女性向け④』とあった。き、気付かなかった…で、でも。
「…あるんですか?こんな…男向けとか…女向けとか」
「うん、あるよ。男のはこんなまどろっこしくないもん」
ふと見れば、画面の中の二人は顔を寄せあい会話してる。『好きだよ』とか…『大事にする』とか。
その最中にも彼女は、髪を撫でられたりおでこやほっぺたにキスをされていて。
そのキスは、首筋、鎖骨、胸元へとどんどん下がっていって。彼女はくすぐったそうに身をよじっているけど…気持ちよさそう。そんな様子を見て相手役の男性は優しく微笑み、『可愛い』と告げるのだ。
彼の言う『男性向け』のものは見たことがないけど…今見ている『これ』は、確かに女の子に好まれるかもしれない。…少なくとも、わたしには。
好奇心と胸の高鳴りを覚えながら…いつしか夢中になっていた。
「さっきの仕返し?」
それを現実に引き戻したのは。ほのかな石鹸の香りと…耳のすぐそばでの静かな囁きだった。
「ずっとお預け喰らってるんだけど」
…いけない。忘れて…ないない!ない!!画面もそのままに慌てて彼の方を向いた。
「ごめんなさ…っ!あ…わたし、シャワー浴びて…っ」
「だめ。もう待てない」
怒ってる…?肩を抱かれ、彼お得意の有無を言わさぬ優しい力で押し倒されてしまった。
「…でも…その…におい…」
「"俺"が、消したいの。未結ちゃん」
──そう、忘れてない。
匂いだけじゃなく、わたしに残された『彼』のすべて。
それを消せるのは…彼だけだって。