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BeLoved.
第42章 【紳士なんかじゃない】
「…ちょっとだけ…」
夕食の片付けも明日の仕度も、ご主人さまとのお風呂も終えて。彼の部屋を訪れる前に、自室に立ち寄った。
その理由は…そう。目の前の、こたつ。
気付いた時にはしっかりあたっていた。
冷えかけた足先から伝わるほのかな温もり。
…なんてあったかいの。幸せな気分。
だめだ…気が遠くなってきた…
あまりの心地よさにそのまま後ろに倒れ、睡魔に誘われるまま、夢の中へと落ちようとした…ら。
「未結どうし…、…あ、やっぱり」
なかなか現れないわたしを心配してか。麗さまが部屋を訪れた音で、現実に引き戻された。
彼の視線の先には、仰向けの状態でこたつにお腹まで潜り込み、すやすやと寝入った(ように見える)わたしの姿。呆れ一色の呟きが漏らされたのが聞こえる。
いけない。早く起きなきゃ…なきゃ…起き…頭ではわかってるんだけど、体が動かない。ねむい…
「麗お前風呂長げーよ。やっと空い…あ?どした?」
そうこうしている間に、通りがかりの流星さままで部屋に入ってきたようだ。これまた呆れ声を響かせながら。
「うーわっ、なに。寝たの?ホント期待裏切らねーなこいつ」
「流星うるせぇ。静かにしてやれ」
体の両側に感じた気配。2人は、熟睡する(本当はしてないけど)わたしを挟み座り込んだらしい。
「…口と目、半開きだよ…やばい、超可愛いんだけど」
「間抜け面じゃん。ま、確かにすげー可愛いけど」
「当然。俺の未結だもん」
「だからお前のじゃねーし」
2人は2人の世界に入ってしまったというか…諍いを始めてしまった。しかしそれはすぐ止み、どちらか(ふわっと清涼感のある香りがしたから、多分流星さま)が指先でわたしの頬をつっつき始めた。
これは目を覚ますいい機会。今なら「うたた寝しちゃいました」で大したお咎めなく済むかな。まぁ、からかわれるだろうけど…そんな打算を打ち砕いたのは、指の主の呟きだった。
「なーんで俺らこんなチビすけに振り回されてんのかね」
それは──自問するような。自嘲するような。
普段の飄々としたものじゃない低い声だった。
「嫌ならやめていいよ。今すぐ消えろ」
反対側からしたもうひとつの声も…同じ。
「そーゆー意味で言ってんじゃねーの」
ヘタ麗。ボンクラ。聞き慣れた文言が飛び交う。
…完全に起きるタイミングを逃してしまった。