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BeLoved.
第42章 【紳士なんかじゃない】
「ただいまー」
数時間後、19時を回った頃。玄関の方から声がした。
帰ってきた!足音が…ふたつ。やった、2人一緒だ!
「おかえりなさい!」
配膳できる直前まで準備してた夕食を放って
逸る気持ちにせっつかれるように飛び出して。
訝しむ彼らの袖口を掴み、リビングまで引っ張った。
「じゃーん!どうですか?!」
こたつに向かい両手を広げ、意気揚々と宣言して。
わたしは満面の笑みを浮かべた。
「今夜はここでごはんにしましょうねっ!」
てっきり「いーんじゃね?」とか「いいね」とか。
そんな言葉が返ってくると思っていたのに。
彼らは無言で突っ立ったままこたつを見下ろしている。
どうかしたかな?…鈍いわたしでもさすがにその不穏さを感じ取った頃。徐ろに沈黙は破られた。
「…未結これ、すっげー小せーんだけど…」
「…未結ごめんね、俺もちょっときつい…」
!!
…不覚にも、彼らの『体格』を考えていなかった。
こたつを挟み向かい合う彼ら。…あれ、あのこたつ、あんなに小さかった…っけ…?掛け布団の下から覗いているのは、伸ばされた足。二人とも足首までしっかり外に出ていた…。
「ミカン箱みてー。あーでも麗、胡座かきゃ何とか……脛当たるわ」
「あぁ流星、正座……悪りぃ何でもねえ」
…二人とも気を使って、色々試してくれている…
「な…なんか、ごめんなさい…」
浮かれた気分が一気にしぼんでいくのがわかった。
わたしまた、自分のことばかり考えて…。
情けなさに俯く。…やだ、目頭が熱くなってきた。
こんなことで泣いちゃ駄目、だめ…
「じゃーこれ、未結専用ってことにしよーぜ」
「えっ?」
流星さまは飄々とした口調でそう言うと、プラグを引き抜いたこたつを掛け布団ごと持ち上げた。
戸惑うわたしをよそに「部屋置いてやるよ」と告げ、さっさと歩き出す。
「賛成。おいで、未結」
「あ…っ?」
今夜のご主人さまは、麗さま。
彼に手を引かれ、流星さまの後に続いて
わたしは自室へと連れていかれた。
「とりあえずここ置くわ」
かくして部屋の真ん中に置かれたこたつは。すぐそばのコンセントにプラグを差され、布団も直され、いつでもあたれる状態に整えられた。
「ん、いーじゃん」
「かわいいね」
そこで初めて彼らは笑ってくれて。
左右から頭を撫でられたのだった。