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BeLoved.
第1章 【はじまりは、別れから】
自分がこんな節操なしだとは思わなかった。
『同時に二人の男性を好きになった』
誰にも言えない。誰にも相談なんかできない。
お互いに異性として意識してしまっている以上、もう以前のように接することも、お仕事をさせて頂くこともできない。
だからもう会わない。
全てを正直に伝えた上で、わたしは消える。
それが最善策で、それがわたしを好きになってくれた彼らに対する最後の礼儀だ。そう思った。
嘘もお世辞も苦手で、口下手なわたしは、彼らに包み隠さず伝えた。ない勇気を振り絞り、一対一で向き合って。
『あなたのことは大好きです。でも…』
言い終わって深く頭を下げた。あなたを選ぶことはできない。ごめんなさいと。
怖くて怖くてたまらなかった。
呆れられるだろう。嫌われるだろう。
罵詈雑言を浴びる?いや、もう
ふざけるなと殴られるかもしれない。
何よりも、傷つけてしまうことが怖かった。
好いてくれた気持ちを、こんな最悪な形で無下にするのだから。
でもそれらは全部杞憂だった。
彼は『分かった、ありがとう』と頷いてくれ、いつもしてくれたように頭を撫でてくれた。
そこにあったのは優しさだけ。反則なのはわかっていたけど、泣いてしまった。
その後、勤め先の家政婦派遣会社に出していた希望が通り、奉公先を変えた。
社の規約通り、彼らにはわたしの個人的な情報は一切伝えていない。
これでもう、完全に彼らとはお別れなのだ。
二度と会うことはない。
いや、会えないんだ。
わたしには彼らに会う資格なんかない。
そう思っていた。違う。思うようにした。
……なのに。
「──久し振りだね、未結」
『彼ら』は再び 、わたしの前に現れたのだ。