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BeLoved.
第7章 【彼が食べるわけ】
ご主人様たち。男性だから、と言ったら偏見かもだけど…よく食べる。たくさん食べる。
わたしが作る料理を、二人とも美味しいと褒めてくれる。けれどたまには口に合わないときもあって…。
そんな時流星さまは「悪りぃ、無理」と残してしまうけど、麗さまは違う。いつでもきれいに完食してくれる。
そうなるとやっぱり作り甲斐もあるというもので…。もっと頑張ろうという気にもなれる。元々好きだったお料理も、更に楽しくなった。
さて、今日の献立は何にしようかな…
───────
「いただきます」
そんな、ある日の夕食時。
流星さまはお仕事のため不在。麗さまと向かい合って座る、二人きりの食卓。
毎回のことなんだけど、一旦食事を始めると彼は無言。次に声を聞くのは「ごちそうさま」を言うときだけ。
本当に食べることに集中しているのだ。
「あの…麗さま」
「ん?」
返事はあっても、顔を上げることはない。視線は食事に落としたままだ。
「あの…美味しい、ですか?」
「うん。美味しいよ」
すぐに返ってきた素直な答えに、思わず顔が綻んでしまう。
わたしは彼のこういう所が好き。
わたしのご飯をきれいに食べてくれるところ。そして良いものは良いと、物怖じせずはっきり伝えてくれるところ。
…思えば麗さまと初めて会った日も、こうして向かい合って、わたしが作ったご飯を食べたんだっけ…。
「すっごく今更ですけど…麗さま食べ物の好き嫌いは、ないんですか?」
「うん。ないよ」
やっぱり。今までわたしが作ったもの、全部きれいに食べてくれているものね。
今夜の主菜は鰈の煮付け。麗さまはそれを箸で器用に一口大にしていく。さすがと言うかやっぱりと言うか、食べ方もきれい。
「…子供の頃からそうなんですか?お食事の時は静かで、お箸も上手で、残さなくて」
きっとご両親からきちんと躾をされて、お行儀よかったんだろうな。そう思って聞いたんだけど…
「…ごめんね、食っていい?」
「…あ、ごめんなさい…」
返ってきたのはすごく煩わしそうな反応。邪魔しすぎたかな。
謝罪しすぐ会話を止め、召し上がってくださいと促す。
再び食事に意識を集中させる彼とともに、わたしもちびちびと箸を口に運び食事にありついた。