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BeLoved.
第7章 【彼が食べるわけ】
「あのね、未結」
ごちそうさま、のあと。
空になったお皿を片付けるため重ねていると、声をかけられた。
「箸は兄姉に徹底的に躾られたの。綺麗に食べなさいって」
「えっ?……ああ、さっきの」
何かと思ったら、さっきの話の続きだった。麗さまも、流星さまに負けず劣らずマイペースだ。片付けの手を止め彼の方を向いた。
「食うとき黙ってんのはね…うちの母親、規格外のメシマズだったの」
「…めしまず?」
「そのまま。作る飯がまずいってこと」
自分の分のお皿を重ね、渡してくれながら麗さまは言った。眉間にシワを寄せて。
「苺入りの煮物やらりんごジャム入った味噌汁やら、生クリームぶちまけた刺身とか、普通に出てきたよ」
「い…いちご?ジャム?生クリーム…??」
「一番ひどかったのはピンク色のカレー。素材何だったのか、今も謎だからね」
話を聞いても想像がつかない。
そもそも何でそれを組み合わすという発想になるんだろうか…。聞いただけで美味しくなさそう。
「そんなもんばっか食ってきたから、未結の料理って俺には何でも神がかり的に美味いの。だからくっちゃべってられないんだよ。しっかり味わいたいから」
「そ…そうだったんですか…」
…その、すごい献立との比較でかぁ…。心なしか複雑な気持ちにならなくもない。けど敢えて考えないことにしよう!
こんなとき流星さまなら『美味ぇって食ってんだからいーんじゃね?』うん、きっとこう言うはず!ここは見習って、ポジティブに!
それにしても…。
ピンク色のカレーかぁ。確かレトルトで美味しいのがあるって、前に会社の人が言ってたっけ。お取り寄せして、再現してみようかな。…楽しそう。
口に出してはいないのに、そこですかさず麗さまから制止が入る。
「絶対やめてね。俺泣きながら食ってたんだから」
…心を読まないで下さい…返事をするより早く、空になった茶碗が差し出された。
「昔の話したら腹減った。おかわり」