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BeLoved.
第42章 【紳士なんかじゃない】

今度は指の腹が、唇を撫でてる。
口紅を塗るみたいに、ゆっくり。

中心あたりで動きを止めたそれは、感触を確かめるようにぷにぷにと押してくる──と思ったら。

「!」

充てられた、指とは違う柔らかさ。これは…唇だ。
…キスをされてる。

それは角度を変えて何度も何度も重なり合って。
その度に鼻をくすぐるのは甘い匂い。…麗さまだ。

心地良さに酔い痴れかけた刹那。
寝間着の上から胸に触れられた。…左側から。

その指は前を留めるボタンを器用に外していく。
『眠っている』わたしはもちろん抵抗できない。

やがて、素肌がひんやりとした空気に触れる。
初めて『彼ら』の眼前で素肌を晒してる…。

一対一の時より遥かに恥ずかしい。だけど
『眠っている』わたしは動いてはならない。

独り謎の使命感と羞恥心と戦う耳に届くのは
彼らの相変わらずなやり取り。


「俺前っから疑問なんだけど、これ寝る時も要んの?」

左側から聞こえた声の主…流星さまは。
ブラ紐に掛けた指先を軽く引きながら疑問を口にした。

「…多分、夜ブラってやつ。胸の型崩れ防止用らしいよ」
「へー。どんだけ崩れたって俺は全然気にしねーけどな」
「俺もまったく構わないんだけどね」

未結は未結だし。彼らはそう言い切った。

「……」

──本当に、この人たちには嘘がない。

いつでもまっすぐな気持ちを言葉にする。

それはつまり、彼らの言葉は本心からで
常日頃からそう思ってくれているということだ。
それはすごく幸せで、有難いことで…

「ま、確かに肉付きはよくなったよな。諸々」
「今くらいの太さが丁度いいよ。前は細すぎ」


…忘れてない。この人たちには容赦もないって。

確かにここで暮らし始めてから…お肉はついた。そして…その…抱かれるようになってからは、ブラが2サイズアップしてしまい、手持ちがみんなキツくなってしまった。

仕方なく新調した際に、店員さんに勧められるまま購入したのが今着けている…麗さまの言う通り、夜ブラだ。
だってやっぱり好きな人の前では、いつまでも可愛く…

「それな、麗。すげー気持ちいーんだわ」

思考を止めたのは、清涼感のある香りと。
背中から包み込む、突然の温もりだった。
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