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BeLoved.
第43章 【彼の根底にあるもの。1】
──ガン!
ふたりだけの世界を割ったのは、突然響いた異音だった。
…なに?今の音…?
「うーわっ、来たよ」
「っえ?…ひゃっ!」
──ガンッ!!
目を凝らしよく見たら、音に合わせてシャッターが揺れていた。…外から何かが打ち付けている?みたい?…『来た』?
ま、まさか?!
──ガン、ガン、ガン!
だんだん間隔が短くなってきた。
力も強さを増してる。
「…あの…、もしかして外に居るの…」
「だろーな。あ、ついでに換気するわ」
流星さまは運転席のドアを開け放ったまま車を降りた。戦慄するわたしを安心させるためなのか口調は軽く、頭を掻いたぐらいにして。壁に設置された開閉ボタンが押され、軋む音を立てながらシャッターは上がった。
徐々に見えてきた向こう側。
そこに居たのは…麗さまだった。
予想はしてたけど…的中したらそれはそれで戸惑った。何しろ今朝から色んなことがあり過ぎた上に、とどめのあの電話だ。どんな顔をすればいいか解らない。
片や麗さまに表情は無い。言葉も無い。両手をポケットに入れて直立しているだけ。でもハッキリわかる。今の彼も普段の彼じゃない。そう、いつか鏡を叩き割った時と同じ…
「麗〰、やっぱお前か。うっせーよ、警備来…」
流星さまがうんざりした口調で話している途中、麗さまの右腕が僅かに動いたと思った瞬間。わたしの視界から流星さまが消えた。
「、え?!」
最初、何が起きたかわからなかった。
わたしが平手打ちを当てたのと同じ場所に…拳が打ち付けられたのだ。加減も容赦もなく。
目線を下げていくと、流星さまは…いた。コンクリートの地面に膝をついて。一度口元に当てられ離された掌が赤い。…出血したの?!
それは場所と立場を入れ換えた今朝の光景そのもの。──いや、漂う殺気が今朝の比じゃない!殴打も一発では済んでいない。反射的に車を降りたものの、戦慄くしかないわたしの眼前で『暴力』は続いた。
やがて麗さまは流星さまの髪を鷲掴み、そのまま引き摺って歩き出した。流星さまが何か喋れば、躊躇いなく腹部に蹴りを入れ黙らせて。
外に停めていた愛車の後部座席に流星さまを放り込んだ彼は、ドアを閉めこちらを向いた。…無表情で。
「未結も乗って」
「で…っでも…」
「俺が優しく言ってるうちに乗って。未結ちゃん」
従う、以外の選択肢なんか存在しなかった。