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BeLoved.
第43章 【彼の根底にあるもの。1】
「───しかし、朝6時からヤる、玄関でヤる、挙げ句にあんな狭い車ん中でもヤる。テメーのバイタリティまじで半端ねぇな、流星」
「だろ。褒めろ讃えろ」
「うん、俺には無理だ」
ガレージでの修羅場から、約二時間後。
わたしたち一行は夕食の席に着いていた。
本日のメニューは……焼肉。『血を流したあとは肉』という麗さまの経験論(?)から、焼き肉屋さんにやって来た。
…以前のわたしなら到底入れない、全席個室の高級店。
テーブルを挟み、向かい合って座る彼らの会話に耳を傾け、思わずため息をつく。『俺には無理』の部分がいたくお気に召したらしい流星さまには、向けられている冷眼は気にならな…違う、気付いてすらいない。
ああ、なんて単純…じゃなくて、素直なの。
鼻高くしてますけどそれ、皮肉ですよ…
テーブル中央の網の上で、素晴らしいお値段のお肉たちが炙られるのを凝視しつつ。ちびちびとサンチュにかじりついた。うぅ…瑞々しくて、おいしい…
「……」
わたしの右隣に座る流星さまを、横目でそっと見上げる。
その頬には全体を覆う大きさの湿布。…打たれたところが腫れてきたので、帰り際に(お願いし倒して寄ってもらった)薬局で購入したもの。お肉を取るためのトングを持つ麗さまの右手の甲にも、絆創膏。どちらもわたしが貼り付けたのだ。
それを見て。わたしはガレージを後にしてからの、車内でのやり取りを思い出していた。
───────────
「人傷つけるってこういうことなんだよ」
運転しながら麗さまは言った。殴り付けた際に流星さまの歯で裂けてしまった右手の甲を、助手席で固まるわたしに示しながら。
「誰か傷つけたら必ず跳ね返ってきて、自分も傷つくの」
辛いから、病んでいるから、は決して免罪符にはならないのだと。勿論それはこのボンクラに限った話でなく、自分もと。──彼の口調は、既に普段通りのもので。
「いい加減わかったと思ったんだけどね」
彼がルームミラー越しに見やった先には…座席に凭れ、鼻と、裂けた唇から滴らせた血で顔と襟元を汚し、髪も乱れたままの流星さま。
「麗のは平気だけど未結のビンタは効いたわ。痛かった」
…こちらももう、普段通りの口調だった。悪戯っぽく笑ってみせたくらいにして。