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BeLoved.
第8章 【男と暮らすということ】
「で、テメーは何でその話を俺にすんのかな」
「自慢してんの。未結の裸見たの、俺が先ー」
「…ドヤ顔超うぜぇんだけど。殴っていい?」
いつの間にか麗さまが帰宅していた。ダイニングテーブルに向かい合って腰掛けるご主人様たち。会話は聞き取れないけど、麗さまのただならぬ気配と彼の手の中のスマホが立てた、ミシリという不吉な音は感じ取れた。
いつもなら「ふーん。で?」と聞き流すところが、今は空腹のため、気が立ちやすくなっているんだろう…わたしは大急ぎで彼の分の食事を暖め直し、御前に並べた。
「どっ、どうぞ召し上がって下さい!…あ、流星さま!髪の毛!しっかり乾かして下さいね」
麗さまが落ち着いたのに安堵した矢先、流星さまの髪がまだ濡れているのに気がついた。毛先からはポタポタと水滴が落ち、首にかけられたタオルに吸い込まれている。
「やだ。俺ドライヤー嫌いっつったじゃん」
「駄目ですよ濡れたままじゃ!流星さま、鼻風邪引かれてますよね?悪化しちゃいますよ」
「は?」
きょとんとした表情の彼。とぼけてもダメです。わたしは知っています。
「お部屋のゴミ箱、ずっとティッシュで一杯だったじゃないですか。鼻水ひど」
「っ!はははっ」
言い終わるより早く、麗さまが吹き出した。
口元を握り拳で押さえ肩を震わせ、更に笑いそうになるのを堪えている…。
「…仕方ねーだろ、男なんだから」
忌々しげな呟きを漏らす流星さま。その表情は憮然としたものだ。それを見たわたしは、怒らせてしまったのかと軽くパニックに陥り、彼らの顔を交互に見た。
「えっ…ななななんですか!?」
「いや…未結ご…ごめんね。大丈夫。り、流星、至って健康…だから。…あぁもう未結、最高。かわいい」
お褒めの言葉を頂いたが…??…わたしの頭は疑問符だらけだ。とにもかくにも風邪でないらしいことには安堵したけど…なんで麗さまには分かったんだろう。
「ヘタ麗笑いすぎだろ。お前どーしてんだよ」
「教えない」
何の話をしているんだろうか…。男の人との暮らし…という以前に、男の人自体が謎だらけだ。
それも徐々に馴染んで…慣れていくんだろうな。
「……」
男と暮らすということ。
手に色濃く残る、感触。
……もしかしたらわたしは
溺れてしまうかもしれない。
少しだけ、怖くなった。