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第8章 【男と暮らすということ】
彼自身に触れさせられたわたしの手。それに重なった彼の手に、微かに力が込められたのがわかった。呼吸も浅くなってきている。それは逆上せたからじゃない。…興奮してるから。
「洗面所にゴムあんだけど。挿入れていい?」
「……!」
逃げられない状況でのその言葉。…躊躇った。彼が望む答えなんか分かりきっている。
わたしだって、けして嫌なわけじゃない。ただ…
「未結が欲しい」
まっすぐわたしを見下ろす、漆黒の瞳。
"赦し"を得れば、今にも飛び掛かりたい。
流星さまからは、そんな気配すら感じた。
"最優先されるのはわたしの気持ち"
つい今しがた言われた言葉。
彼はご主人様の一人。その立場を以てすれば、わたしの気持ちなんか関係ないはずだ。
でも彼は、わたしの気持ちを待ってくれている。
怖かったけど、わたしは彼を信じた。
「ごめんなさい…、今は…」
とても目を合わせられず、俯き絞り出すような声で告げた。今 はできない、と。
「…じゃ、キスしよ。未結」
「…ぁ、…ん」
腰に添えられていた手は顎に移動し、彼の方を向かされる。唇が重なりあった瞬間、手の中の彼自身は再び変化した。
「っ、や…、おっきくな…った」
「…な。未結のせい、だよ…っ」
「んう……っ」
唇は再び塞がれた。少し強引に。
「あ…っ、ふ…う…っ…」
熱くて滑らかな舌が絡み付いてくる。
初めて交わす、深い口付け。
時折わたしが漏らしてしまう鼻にかかった声に煽られるように、手の中の彼は脈打った。
「すげー…したい。未結が欲しい」
「……。…あの……」
再三の申し出。彼も自分を抑える限界が近いんだ。
なら…言わなきゃ。
「……お部屋で…、なら」
そう。ここは浴室。いかんせん明るすぎる。
"わたし"をさらけ出すのも、剥き出しの"彼"を目の当たりにするのも、刺激が強すぎて耐えられそうになかったのだ。
「…わかった。我慢する」
完全な拒絶ではなかったことに安堵したのか。
そう言うと彼は両手を離し、わたしを解放した。
「っとに罪な女だよなー、おまえ」
「ほ、ほへんははひ…」
腹いせ…だったのだろうか。頬を両側から柔らかく引っ張られ、軽い口調で悪態を吐かれた。
ごめんなさい、と声ならぬ声で謝罪したわたしの頭を彼は優しく撫で、先に上がれと命じたのだった。