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BeLoved.
第44章 【彼の根底にあるもの。2】

「だからなんで誰も電話出ねーんだよ!」

怒鳴り声で目が覚めた。


身を包むのは慣れた香りの寝具。ああ、ここはわたしのベッドか…。…あれ?わたし、どうしたんだっけ…

『いっぱいにしてあげる』

…思い出した。言葉通り、何度も彼の全てを受け入れ満たされ。疲れ果てて寝落ちてしまったんだ…

全身がだるい。服も着ていない。…あちこちに残された噛みつきの痕。左手薬指の傷。極めつけは…

「っ、ん」

秘部から溢れ、内股を伝い落ちる生暖かいもの。…わたしに残された彼の痕跡全てが、愛され尽くしたことを物語ってる。

視線を移した先。部屋のドアは半開らかれていて、その隙間から流星さまが足早にリビングに向かっていくのが見えた。



「…りゅうくん」
「…なに麗お前、まだそのモードなの?」

どうやら彼らはリビングで鉢合わせたらしい。ドアは開け放たれたままらしく、この部屋まで彼らの声は届いた。抑揚のないものと、辟易したようなもの。内容までは聞き取れないけど…

「未結は」
「…やっぱりkeigoのエンゲージリングかな…」
「ケイゴ?…あーあの宝石屋?じゃねーって。未結は」
「…あ、娘だったらどうしよう…彼氏なんか連れてきたら、俺そいつ殺しちゃうよ」
「うぜーな!聞けよ!未結は?!」
「未結は俺が──」

──突然、音が響いた。…なにか固いもの…机?を蹴ったような。嫌でも不穏な空気を感じてしまい硬直したら。聞こえたのは更に更に大きな…恫喝。

「麗お前ふざけんなよ!何やってんだよ!!」

…からの、何かが何かを打ち付けた音。

「…ふざけてんのはテメーだろ流星!!」

…それが、もう一度。

わざわざ出向かなくても、どんな場面が繰り広げられているのか容易に想像がつく。


殴り合い。



「ヘタレ野郎が!サオへし折ってタマ潰して、マジもんの"うららちゃん"にしてやるよ!」
「…上等だボンクラ!テメー小心者がいつまでも調子こいてんじゃねぇぞオナニー野郎!」


ととと止めなきゃ…!でも体は言うことを聞かない…
それ以上に…こわい。

ああ、音も声もますます大きく激しくなっていく…

お願い、どうか悪夢であってください…

祈るように瞳を閉じたわたしの耳に、彼らが同時に発したその声は…それはそれは深深と突き刺さったのだった。


「未結は俺のものなんだよ!!」
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