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BeLoved.
第45章 【彼女の根底にあるもの。】
それは、ずっとずっと言いたかった言葉。
だけどそれは、絶対に言ってはいけない言葉。
一年前、わたしを好きだと言ってくれた彼らを
わたしは選べなかった。だから、選ばなかった。
姿を消したわたしを彼らは見つけた。見つけてくれた。
『そばにいて』と差し伸べられた手をわたしは取った。
わたしたちの始まりは、『別れ』から。
一年前彼らに繋がれた手は、今はわたしの方が
繋いでいる。離れない…離さない、と、きつく。
愛してくれる、満たしてくれる、わたしの男。
貴方がいい。──貴方たち『ふたり』がいい。
虫のいいのも、傷つけているのもわかってる。
わたしがどれほど冷酷で、自分勝手なのかも。
だからそれは、絶対に言っては──
「やっと言ってくれた」
聞こえたのは、人心地付いたような、ゆるやかな声。
「…ただ、もう少し雰囲気は持って欲しかった、かな…」
「涙と鼻水ダラッダラなうえに、顔中糠だらけってなー」
未結らしいけど。と。彼らは顔を見合せ苦笑した。
「未結おまえ、男にももーちょっと夢見させろよ」
「ま、何やっててもかわいいんだけどね、未結は」
空いている方の手で、頭を交互に撫でられて。──その手がなんだか、いつもより優しく温かい気がして。身をつまされる思いがした。…駄目だ、また涙と鼻水が…
「まーでも、良かったよな、麗」
「キャバ行きが怒られなくて?」
「バカ、そっちじゃねーよ。未結に伝わってたってこと」
静かな声で言いながら、流星が人差し指と親指の腹で鼻水を拭ってくれた。慌てるわたしを遮り、彼は言葉を続ける。
「朝比奈さん…おまえのお祖母さんに約束したろ。"大切にします"って。守ってきたつもりなんだよ、これでも」
「あ…」
「そうだね。俺と流星の我儘に引きずり込んだんだから、…いま言ってくれた気持ちになってくれてるなら、報いたのかな」
嬉しいよ。麗もそう言ってくれた。…ほら、そんなことされたら。
収まりかけていた涙も、せっかく綺麗にしてもらった鼻水も、また溢れ出して…号泣していた。子供みたいに、わあわあと。