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BeLoved.
第45章 【彼女の根底にあるもの。】
「──あ、未結まさか、俺が今夜報告なしにキャバクラ行ったの麗から聞いた?そんで怒ってんの?あんなん受けた接待の二次会だから、ほぼほぼ仕事みてーなもんよ?しかも麗んとこの系列店だったし、こいつも来てたし」
「ご来店ありがとうございました、俺は定期視察だもん。って、俺がそんな話未結にする訳ねぇだろアホか」
頭の上で始まった、言い争いという名の じゃれあい。
飾らない、装わない、素の彼らの姿。
それをこんな間近で見られるのは、わたしだけ。
それをこんな間近で見ていいのは、わたしだけ…
「でもさー、俺の席についたねーちゃんはプロだったわ。顔覚えてねーけど、久々に女と話して楽しかった」
「だろ。彼女、入店したての頃は毎日泣いてたけど、今じゃ不動のNo1だからね。努力家だよ」
彼らの声を聞いているうち、胸の奥で燻った黒いもの。
それは今、目から鼻から垂れ流れ続けるもの以上に汚くて醜くて…みっともないもの。
これも──この暮らしを始めて、一年。…いや、これはきっともっと前からずっと、わたしの深く深い部分に根付いていたもの。
いつも押し殺してた。だけどもう隠さない。
「未結?」
手を握り返されたことに気付いた彼らが、再びわたしの方を見た。
射抜かれそうに鋭い漆黒の三白眼と、切れ長で、長い睫毛に縁取られた赤墨色の瞳が、わたしを見つめる。
──そう。わたしを見て。わたしだけを見て。
だって
貴方たちは『わたしのもの』なんだから。
離れない。…離さない。絶対に。
だって、わたしは───
「…流星」
「…。なに、未結」
「麗…」
「…どうしたの、未結」
「わたし…」
貴方たちのこと──
「…愛してる…」