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BeLoved.
第10章 【Master Bedroom. 2】
「お先に頂きました…」
ある夜。一日の仕上げである入浴を終えたわたしは、その足で彼の部屋を訪ねた。
小さく息をついたあと、ドアを軽くノックし声をかける。
この部屋の主は、今夜のご主人様である麗さまだ。
「ありがとう。じゃあ俺も入ってくるね」
ドアの向こうからは普段通りの彼の声。
それはごくごく自然なやり取りのはず。
でも今夜は胸が酷くそわそわしていた。
『俺も麗も、未結とセックスしてーの』
流星さまの言葉が反芻する。
家政婦だけでなく、女としても必要とされて
今のわたしはここにいる。
先日わたしは、もう一人のご主人様である流星さまに愛された。あの日以来、『流星さまの日』にはほぼ毎回体を繋げている。キスもスキンシップもたくさん交わすし─「愛してる」その言葉も、勿体ないほど何度も頂戴していた。
それに反比例するように、わたしは麗さまにはまだ一度も抱かれていない。キスすらしたことがないし、彼がわたしに触れるのは、相変わらず頭を撫でる時くらいだ。…と言うかそれ以前に、『麗さまの日に麗さまが不在』ということが続いていた。
元々不規則な上に、繁忙期なのだろうか。
出掛けは早く帰りは遅い。それでも食事は可能な限りお家でとって下さっているけど…食後すぐに出ていくことも多かった。
流星さまみたく一緒に入浴することもないし、ようやく共に床についたとしても、疲れきっているのだろう。ただ並んで眠るだけ。
……でも、今夜は違う。
流星さまからは、今夜帰れないと連絡があった。
反対に麗さまは、今夜はもう外出しないという。
彼がいる『彼の日』にふたりきり。
……決まり、だよね。
あぁ…なんだろう。急に暑くなってきた。
「…お水飲もう…っ」
火照った頬を手で扇ぎながら、わたしは足早に台所へと向かったのだった。