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BeLoved.
第10章 【Master Bedroom. 2】
「俺これ食ったらシャワー浴びて仮眠とるわ。そんでまた出るし」
朝。ダイニングには、今さっき帰宅したばかりの流星さまの姿があった。
「はい。本当にお疲れ様です」
彼にお茶を注ぎながらちらりと壁の時計を見上げる。…普段の朝食の時間を過ぎているけれど、麗さまはまだ姿を現さない。
昨夜は初めて一緒に入浴した後、わたしの部屋で一夜を明かした。抱かれてはいない。彼らのものより遥かに狭い、シングルベッドに並んで眠っただけだ。
156㎝のわたしはともかく、182㎝の彼にはとても窮屈だったと思うけど…わたしは大好きな彼と密着できて、とても幸せだった。
腕の中のぬくもりと、頭を撫でる優しい手。
「愛してるよ」何度も伝えてくれたその言葉。
思い出しただけで頬が紅潮し、惚けてしまう。
…その前に死ぬ程恥ずかしい思いもしたけど。
「なんだー麗。どしたー」
流星さまの声で我に帰り、視線を向けた先には麗さまが居た。寝間着のままなのはさておき、どういう訳かその表情は険しく、顎には片手を添えている。
「…身体中痛てぇ。特に顎」
「お、なんだ喧嘩か?懐かしーな!」
「ボンクラ。違げぇよ。美味いもん食い過ぎたの。…おはよう、未結」
流星さまにはその表情のまま悪態をついても、わたしにはにこりと微笑んでくれた彼は、自分の席、流星さまの正面に腰を下ろす。
わたしも挨拶を返したあと、暖め直した朝食を彼の前に運んでいった。
「何だよまた食いモンの話か、相変わらずだなー。まー仕方ねーか。凄かったもんな、お前んちの飯」
「…ホントにな。あんなもん食ってきて、俺よくここまででかくなれたと思うもん」
「だろー?マジで体が生命の危機感じて、細胞フル活動したんだよ」
流星さまは楽しそうに笑うけど…何だか、壮絶な会話。幼馴染みということもあってか、流星さまは麗さまが食べてきたものを目にしたことがあるようだ。
一体どんな すごさ だったのかしら…。
「でもいくら美味かったからって、顎痛むまで食うことねーよな。なー、未結。なー」
「そっ、そうデスネ?!」
油断していたところに突然話を振られ、声が裏返ってしまう。…麗さまの顎の痛みの原因なんて、ひとつしか思い付かなかったから…
「ど、どうぞ…」
麗さまの食事が整ったのと、彼の最後の言葉は
ほぼ同時だった。
「俺、好きなものは死ぬまで食うからね」