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BeLoved.
第16章 【世界はそれを俺様と呼ぶんだぜ】
「車の、免許を、取りたいんです!」
久々に三人揃っての夕食を終え、彼らが一服するため席を立とうとした直前。わたしは少し前から思っていた事を思いきって打ち明けた。
基本的に、彼らはわたしのやることに反対しない。大抵笑顔で受け入れてくれて、やりたいようにやらせてくれる。
だから…だったんだろう。 未熟なわたしはいつしかそれに驕っていたらしい。
予想以上に予想外だったこの後の展開は、それを嫌と言うほど思い知らせてくれたのだった。
─────────
「はあぁ?!いらねーだろ!未結おまえ何言ってんの?バカじゃねーの?!」
もはや悪態としか取れないばかりの口ぶりでそう言ったのは、流星さまだった。
表情も眉間にシワを寄せた険しいものになっている。…正直、怖い。身がすくむ。でも何とか奮い立たせ、わたしも負けじと言い返した。
「も、持ってた方が便利ですし…そ、それに…運転してみたいんです!」
ここで暮らすようになり、彼らが運転する車に乗せて頂く機会が増えた。その度に思っていたんだ。『申し訳ないな』そして『格好いいな』って。わたしもあんな風になりたいって。
「必要ねぇ!却下!!」
…そんな淡い願望すら、彼は粉々に打ち砕く。
「俺は別にいいと思うけど」
「…まーた麗お前はなぁ!」
早くも挫けそうになった瞬間、救いの手が差し伸べられた。麗さまだ。自分への反対意見に、案の定流星さまの矛先は麗さまに向かった。
「未結に甘すぎんだよ!何でもいーわいーわで受け入れてんじゃねーぞヘタレ!」
「…テメーに言われたくねぇな」
ご主人様同士の言い争いに発展してしまった。
彼が何故ここまで反対するのか。
理由を考えてみる…あ、わかった!
「慎重すぎて却って迷惑になるんですね!」
ぱっと思い付いたものを口にしてみた。
殴り合い寸前までいっていた彼らの気迫はとりあえず引っ込み、流星さまはわたしの方を向いて再び声を張り上げた。
「バカ、違げーよ!おまえ色んな意味で怖えーの!"平気ですよ~"とか言って速度超過しそーだし、認識能力も低いし標識どころか信号も見落としそーだし!普段のすっトロさと抜けっぷり見てりゃ嫌でも分かんだよ!」
「ああ、うん。それは言えてるな」
いさかいは幕を閉じたけど、さりげなく貶されたような気がするのは…気のせいだよね。