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第16章 【世界はそれを俺様と呼ぶんだぜ】

「教習所通う暇あったら家居て仕事してろ!いーな!この話は終わりだ」

とりつく島もないまま、話は強制的に終了させられた。突き刺さる彼の視線。その反論を許さない鋭さは、わたしと彼が出会った頃のままの…『怖い』流星さまそのものだった。当時の記憶が蘇り体がすくんだ。

「オイ麗!お前も変な仏心出すなよ?!」
「…わかった。でかい声出すな」

今の状態の彼と争うのは得策ではない。恐らく麗さまはそう判断したのだろう。未結が怯えている、と流星さまを嗜めたに留めた。表情は険しかったけれど…
その時、室内に無機質な機械音が鳴り響いた。それは流星さまの携帯が着信を知らせるもの。下衣の後ろポケットに突っ込まれていた所謂ガラケーを手に取り、流星さまは立ち上がった。

「未結も二度と下らねーこと言うなよ」

最後にそんな警告を残し、彼は足早にダイニングを後にしたのだった。


──────────



「…ごめんね、未結。怖がらせて」

二人きりになったダイニング。麗さまは深く溜息をつき、謝罪の言葉を口にした。

「…わたしが悪いんです」

思い上がってしまい恥ずかしい、とわたしも謝罪で返す。それに対し彼は違うと首を横に振り、流星を擁護する訳じゃないけどと前置きして話し始めた。

「未結に万が一があったらって、心配で不安なんだよ」
「え…?」
「…未結が思ってる以上に未結のこと好きだからね、流星」

怒鳴り声を散々聞かされた後だからだろうか。麗さまの静かな声と淡々とした喋りは、よりまっすぐわたしの中へと入り込んできた。

「危ない事して欲しくない。だからあの態度」
「……」
「分かりやすいでしょ。…ただ、言い方がね。後でシメとくね」
「そそそっそれは結構です…っ」

…麗さまからは殺気を感じた。彼がさっき引いたのは争いを終結させる為であり、何よりわたしをあれ以上怯えさせない為だ。決して自分の為ではない。慌てて首を横に振った。


流星さまはわたしの事が好き
…信じていいのかな。

「…信じる信じないは任せるね。けどもしこの後ボンクラが甘いもん買って来たら、それが"ごめんなさい"の合図だから。どうするかは未結が決めてね」
「…はい…あ」

静かに開けられたダイニングのドア。
その先には…片手にコンビニの袋を下げた、流星さまがいた。
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